『ララランド』やよくあるミュージカル映画のように、
歌詞で直接的に感情を代弁するのではなく、
とても上質に歌と映像で間接的に感情を伝えてくれる贅沢な映画だ。
冷戦下で社会から引き離される悲しき恋人たちの物語かと思ったら、
どちらかというと2人の男女の求め合う姿といがみ合う姿を引っ切り無しに見せられる映画だった。
もちろん、その背景には社会的事情はあるが、
メインは付かず離れずの2人の関係性だ。
その2人の関係の中で私たちに与えられる
モノクロの美しい映像と音楽たち。
モノクロの映像は無駄な情報をシャットアウトし、
街や時代の明るさや暗さ、ふたりの喜びや悲しみをシンプルに表現してくれる。
音楽もその時代を感じさせながら、
オヨヨの統一した歌で2人の関係性の変化も表現する。
彼らの感情を歌詞で代弁するのではなく、
曲調やその歌自体の作り方でそれを表現する。
ミュージカルは幻想に近いが、
この映画は歌や映像でリアリズム主義で作られている。
彼女たちが歌う姿を通して、
この歌を歌っている背景だとかを自然と考えてしまう。
そして、その音楽や映画たちが彼女たちを社会の悲しさで満たすのではなく、
その場で生きるふたりの喜怒哀楽を表現しているので、
逆にイキイキしているようにも感じる。
だからこそ、悲しき運命の2人には良い意味で見えない。
求めあうふたりの愛の方が大きく見え、
観ていてとても心地が良い。