雷電五郎

ブラック・クランズマンの雷電五郎のレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
3.5
コロラド州で初の黒人警官になったロンがKKK(白人至上主義団体)にユダヤ人の相棒とともに潜入捜査を行うという作品。
潜入捜査の緊張感もありつつ、差別の根強さ、根拠のない人種主義の危なさ、偏った思想に毒されれば人間はいくらでも人間に対して残酷になれるというリアルが散りばめられた良作でした。

スパイク・リー監督は現実社会の問題を強く映画に反映した作品を作る方なんですけど、昔の作品よりこちらは映画としての娯楽も合わせ持っていてバランスが良かったです。
昔の話かと思いきや、ラストに2017年のデモの様子が映し出されいまだもって「十字架は焼かれている」ということを見せるのはショッキングでした。
憎しみに居場所はないというボードの文言が正に映画を表していて、あらゆる方向に差別や憎悪が存在し、自分自身が深く考えていなくとも人は簡単に差別者になってしまうということを常に忘れてはならない。
被差別側に回りたくない、他者に対して優位優勢でいたいという焦り、無意識のうちに差を作ろうとするのは恐らく自分の居場所を取られるという漠然とした恐れなのかもしれないと感じます。

残念に感じるのは、苛烈な差別に異を唱え続けてきた黒人の方の一部が現実社会においてアジア人に対するヘイトクライムを行ったことです。
差別する側になれば善悪を簡単に手放してしまう。虐げてもよい相手と狙いをつければ、暴力も正当化されてしまう。その恐怖と屈辱を誰よりも分かっているはずの彼らさえ、ヘイトクライムに走らせる差別とは他者を貶める権利があると信じ込むための麻薬なのかもしれないですね。

数多の差別用語が飛び交うので結構しんどいですけど、物語の面でも捜査ものとして面白いので配信終了の2月8日までに興味がある方は是非ご覧になってみて下さい。
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