YohTabata田幡庸

ブラック・クランズマンのYohTabata田幡庸のレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
4.0
初めてスパイク・リー作品を観た。
トランプ時代の黒人映画として、2018年が色濃く出ている映画。冒頭から、アレック・ボールドウィンのお喋りに、何を見せられているのかとポカンとしたが、タイトルの出方で、外連味とハッタリの映画だと確信し、そこからは楽しんで観た。とは言え無邪気に楽しめる話でもなければ、後味は悪い。

心なしか、タランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を想起した。どちらかと言えば「ジャンゴ」だろ、と自分でも思うが、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」だ。「Based on the real shit (マジなヤツに基づく)」話であり、歴史をねじ曲げてでもスカッとする話であり、歴史を分かっているからこそ、反動で馬鹿な人類を呪いたくなる映画だからである。

黒人で射撃、黒人の不当逮捕をはじめ、兎に角ウザい「純血」を誇るKKK。あそこに溶け込もうとするアダム・ドライヴァーの頑張り様。然し彼はユダヤ系と疑われ続ける。ずーっと溜まった観客の怒りはクライマックスで、写真撮影、車の爆発、デュークへのネタバラシ、パブと発散される。そして最後に流れる現実の映像と、上下逆さの星条旗。

この映画の先に待っているのは、デュークの当選、トランプ、そしてこの映画の後にはジョージ・フロイド事件だ。

現実がフリのフィクション程、観た後に引きずる物はない。もちろんUSAの黒人差別と言うテーマではあるが、アジアでも、更に言えば日本でも、過激なナショナリズムや民族差別は未だに根強く存在する。これは他人事ではない。

本作は、映画というメディアが持つ力の話でもある。アートやエンタメの力を舐めてはいけない。本作で何度も引用される映画は、KKKが再度、力を持つことを促した「国民の創生」だ。映画史的には外す事の出来ない作品だが、内容は許される物ではない。だが、プロパガンダ映画が映画史を前進させて来たのも確かだ。「オリンピア」や「戦艦ポチョムキン」もそれに並ぶ。戦中ディズニーはプロパガンダを作っていたし、日本のアニメ史に残る名作の中にはプロパガンダがある。

映画を好きでいる以上、それは知っておくべきだと思う。そして映画と言うアート・フォームに密に関わる以上、映画の作り手である以上、それを自覚していてバチは当たらない。

因みに言うと、面白かった。
YohTabata田幡庸

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