YohTabata田幡庸

犬王のYohTabata田幡庸のレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.4
U.S.の「スパイダーバース」シリーズをはじめとする、アニメーションが凄い時代の凄い一作。

湯浅政明作品が特別好きな訳ではないし、追っている訳でもないが、気になって観てみると湯浅作品である事が度々ある。
松本大洋作品は窪塚洋介主演「ピンポン」がきっかけで原作に痛くハマった。
母が見つけて来た女王蜂は偶に聞く。
野木亜紀子作品はドラマをいくつか観ているし、ヒットメイカーとして認識している。
大友良英は「あまちゃん」で知ったが、ノイズ音楽の人と言う認識はある。

この5組の作品群の中では圧倒的にエンタメ寄りだと思う。能の事は全く知らないが、それでわからない様なハイコンテクストな難解さもない。アニメーションも素晴らしい。

友人たちの評価も高く、ある程度楽しみだったのだが、正直乗り切れなかった。頭ではこの凄さは理解出来ているのだが、それ以上ではなかった。

化物として生まれ、体を取り返していくと言う内容は、私の大好きな手塚治虫「どろろ」そのままだ。新鮮さはない。

五体満足になった犬王の派手な服装やメイクは忌野清志郎かデヴィッド・ボウイ、プリンス的な物で、当時からすれば新しいだろうが、今から見れば寧ろ古臭い。

当時の楽器と今の楽器を合わせるのは面白いが、その音はどこから出ているのだ。それとも、オーディエンスにはそう捉えられていると言うバズ・ラーマン「エルヴィス」的な事か。だとしたら、ロック的な音楽を使うのは、当時からすれば新しいだろうが、2021年では時代錯誤甚だしいにも程がある。逆効果だ。

確かに、アニメでコンサートをやると言うのは楽しいし、ずっと音がなっている等、芸術性は高い。アニメーションとしても素晴らしい。だが、様々なコンセプトがコンセプト止まりで、お互いの足を引っ張っている様に見えて仕方がなかった。

多分本作はブッ刺さる人とポカンな人が別れる、圧倒的なカルト作品なのだと思う。
YohTabata田幡庸

YohTabata田幡庸