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帰れない二人のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

帰れない二人(2018年製作の映画)
3.0
【時は残酷、絆は脆し】
ジャ・ジャンクーの映画はどうも苦手だ。今回も、序盤は「いつものジャ・ジャンクーか...これは厳しいな...」と思っていたのだが、1部の終盤から2部にかけてとてつもなく面白くなった。炭鉱を取り仕切るヤクザの集団。男社会に輝く紅の女は、ビンという男を愛し、オタサーにおける姫のごとくブイブイ言わせている。そんなヤクザ集団は、「俺らはどこへ行っても仲間だ!」と盃を交わすのだ。

ビンは、女に銃を魅せこう語る。

「銃を持つと命が短くなる」

ビンのことを強く愛している彼女は、

「今警察の取り締まりが厳しいから、銃はやめてね」と言う。

この映画、ヤクザ映画にも関わらず、銃は数発しか撃たれない非常に珍しい作品だ。徹底的に、発砲描写を抑制することで銃弾の重みを表現している。大量のチンピラに急襲され、ピンチに陥った時に、やむ得ず彼女は銃を発砲してしまう。そのたった数発の銃弾が、彼女とビンを引き裂いてしまうのだ。投獄される彼女。時は軽く、あっという間に5年の月日が経つ。変わりゆく中国の風景に想いを寄せてビンに会うために、旅に出る。しかしながら、「俺らはどこへ行っても仲間だ!」と言っていた仲間はどこかそっけない、というよりもそもそも彼女のことすら忘れていたのだ。

本作は中国という広大な土地の利点を活かして『オデュッセイア』たる壮大でカタルシスを生み出す物語を展開する。それでもって、時は残酷なほどに過ぎ去り、友情も脆く崩れ去ってしまう様の哀しさを、意外なことに北野武的ユーモア織り交ぜて描いている。逞しすぎてクレイジーな、チャオ・タオ扮する女の生き様に観るものは一時も目が離せなくなります。ただ、この作品が残念なのは、第3部があまりに投げやり蛇足だったことだ。第2部のあのびっくりエンディングで終わらせとけば、彼女の《孤独》を最大限強調して終わらせることができた筈なのに、物語の流れに断絶を感じる強引な描写、そして突然映画を終わらせるエンディングに肩透かしを受けました。惜しい!
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