しゅん

誰もがそれを知っているのしゅんのレビュー・感想・評価

誰もがそれを知っている(2018年製作の映画)
3.8
『セールスマン』の綺麗だけど堅苦しい感じにくらべ、より自由と厳密さが溶け合っている。

時計台の裏、新聞の切り抜きときて、車の中でスマホ持ってはしゃぐ女の子。そして結婚式。嫌な予感しか湧かないいつものファルハディだぁと思っていたのだが、状況の転換がサラッと行われ、その後の緊迫と焦りを見事に共有させられ、後半はただただ面白く観てしまった。

『彼女の消えた浜辺』とほとんど同じ展開だけど、共同体の充足→行方不明の反転性に重きを置いていない点で今作は異なる。杖を落とすところの切り返し、ライスシャワーの際の町人の視線、劇中延々と聞こえる虫の声。誘拐事件の悲劇性以上に、町を取り囲む空気の強張りが伝わるようになっていて、「誰もが知っている」ものはその「空気」なのではないかと思った。
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