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こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話のsoramametonのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

身体に不具合がある障がい者は死ぬまで病室の天井の穴を見つめて死んでいくべきなのでしょうか…。障がい者として生まれたからには、当たり前の生活を望んではダメなんでしょうか…。
そんなことを考えさせられる映画。

重いテーマなのに終始コメディーなので不謹慎になりそうな笑いに最初戸惑った。
筋ジストロフィーを患う鹿野がトイレに間に合わず失禁してしまう。これが健常者だったら笑えるのだが、障がい者だと笑ってはいけないのではと感情にブレーキがかかってしまった。しかし、これは私の勝手な偏見なのだと気がついた。
障がい者だから笑ってはダメとか健常者だから笑っていいという事ではないのだ。鹿野は障がい者・健常者の偏見という垣根を取っ払おうとしたんだと思う。
笑いたいときは笑い、泣きたいときには泣く。同じ人間じゃないか、私たちは同じ人間なんだよと鹿野に言われているような気がした。

なんであれ、お互いの信頼関係ができていないとこのような生活はなかなか難しそうではある。
健常者であればバナナが食べたいと思ったら、自分で買いに行けばいいが、障がい者がバナナを食べるには介助者に行ってもらうしかない。バナナを食べたい欲求を満たすためには自分以外の誰かの労力が必ず必要になる訳である。それをどうとらえるかが重要だ。
鹿野を支えるボランティアの人たちは鹿野の手となり足となって奮闘するが、そこにはやらされてる感がない。鹿野という一人の人間を愛しているからこそのものだ。鹿野は努力をしてないわけではない。英検を受けるために勉強をし、夢を実現しようと走り続けている。ただ、できないことをできないとして割り切っているだけなのだ。

障がい者が肩身の狭い思いをして健常者に遠慮して生きることをよしとした時代が終わり、だれもが自分らしく生きられる未来が来るのかはわからないが、そんな人たちを否定しない人間でありたいと私は思う。
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