3月末のU−NEXT退会最後に、ずっと観てみたかった1950年代フランス映画界を代表する美=ジェラール・フィリップの代表作を。
1910年代のモンパルナスを舞台に、貧困と病苦、麻薬と飲酒中毒のうちに果てた稀代の画家モディリアーニの晩年を描いた作品。
僅か35歳でこの世を去った画家モディを演じたのが、本作から2年後36歳という若さで肝臓癌に倒れたジェラールというのも、何だか感慨深いです。
モディリアーニの妻となるジャンヌに扮するのはアヌーク・エーメ。まぁなんとう美男美女の組み合わせ。二人が顔を寄せ合う姿だけで画が華々しい。
「酔うなら自分にだ」
飲み過ぎを注意されてモディが放つこんな台詞ですら、ジェラールであれば全く嫌味を感じさせないから不思議(笑)どこかナイーブで知的な印象のある彼は、アラン・ドロンとはまた違った魅力がありました。
なかなか絵が売れず、生活苦に耐えながらも甲斐甲斐しくモディを支えるジャンヌが、なんとも健気で愛おしい。そこへ忍び寄る、リノ・ヴァンチュラ扮する画商モーレルの影。終盤この打算的な画商モーレルの存在が、まさに死神さながら。
本編中モディが、セザンヌを賞賛する富豪に対して、ゴッホを引き合いに語るシーンがあるのですが、生前ほぼ日の目を見ず生涯を終えた画家の一人として、彼とモディをリンクさせたのは巧いなと。
ジャンヌが彼自身と彼の才能に惚れ込んでいたんだという事が伝わって来ただけに、突然訪れる切ないラストは、後味の悪い鑑賞後感を残します。
映画では描かれていませんが、のちにジャンヌは後追い自殺を図り亡くなったそうで、彼女の心情を察するに余りあり、胸が痛むばかり。。
「絵画は苦悩から生まれる」