マリリン

モンパルナスの灯のマリリンのレビュー・感想・評価

モンパルナスの灯(1958年製作の映画)
4.5
【死んでから絵は売れるものだ】
芸術家というものは、命を削って制作することが多い。ゴッホを筆頭に、他人よりも自分を痛めつけることで創作威力が生まれる。この作品の主人公アメデオ・モディリアーニも浴びるように酒を飲む。
ピカソのように前衛的な作風だけれども、彼の作品の多くは肖像画。どれも悲観的な表情をしている。彼の絵を見て「怖い」と言う人も多いと思う。私もいつかの展覧会で彼の絵を見て何とも悲痛な印象を受けたのを覚えている。そうか、彼はこんな人物でこんな人生を歩んでいたのかと、この作品を通して知ることができた。
絵を描きながら、酒を飲み、女を抱く。面白いのは、彼は女だけでなく男にもモテたと言うこと。決して同性愛的な意味ではなく、破滅的な彼を必死にサポートする隣人がいたりする。彼が画家じゃなければ、きっと善良な良い人間だったんだと感じる。狂おしいほど愛し合う妻ジャンヌも、荒れ狂う旦那を献身的に支える。彼を愛しているし、彼の才能を信じている。
才能がありながらも、痛々しい自己犠牲がやめられない芸術家の伝記映画は多くあるけれど、さすがベッケルである。伝えたいのは芸術家の人生だけでなく、生きている間では日の目を見ることのない不条理さと、彼を取り巻く意地汚い人間たちの姿である。結局芸術はビジネスなのだ。描く人間と買う人間との価値観の違いが恐ろしい。エンディングでは、人間の恐ろしさが露骨に描かれており、そこら辺のホラー映画より怖くて最高のシーンだった。
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