ちょげみ

猫の恩返しのちょげみのレビュー・感想・評価

猫の恩返し(2002年製作の映画)
3.9
エンタメ作品でありながら重いテーマやシリアスな話、はたまた根が深い問題にまで切り込んでいた当時のジブリ作品としては珍しい、純粋な子供向け映画です。

一言で言うなら"日常の中に埋もれている自分を再発見するためのゆるふわ冒険活劇"みたいな感じでしょうか。


とまあ、ストーリーに関しては特に言及すべきことはないのですが、、、強いて言うなら猫の国への冒険はハルにとって自分探しの旅ならぬ自分発見の旅になっている、と思うわけです。

そもそものことの発端、ハルが猫の国へと招待されることになったのは猫の国の王子をそれと知らず助けたこと、つまりは純粋や善意や優しさなわけですが、悪意はないとはいえそれにつけ込まれるような形でなし崩し的に無理やり猫の国へと連れて行かれてしまいます。

優しさがあのような結果を招いたわけですから、何が美点で何が欠点かなんて一通りには言えない、また、短期的な倫理(後先を考えず目の前の命を優先すること?みたいな)は長期的に見れば必ずしも物事を良い方向へ持って行かない、みたいな教訓を得ることができるのかもしれません。
ただ、ハルを救ったのは紛れもなくハルが過去施してきた善行、優しさなわけです。

優しさが必ずしも良い結果を招くとは限らない一方で、ハルの優しさがあったおかげで今の世界が形作られている。

猫の国への旅はそんなかけがえのない長所を持つハルを全面的に肯定して、特別なものがなくとも人は誰かの特別にはなれる、ちゅうことを明に暗に伝えている、と思います。


...かやうなことをハルは一晩ばかりの夢のような冒険で発見するわけですが、バロンやムタさんとの別れのシーンがまたいいですね!

「とても良い夢を見ていたのよ。でも大丈夫、もう夢は覚めたから。。。」(実際にはこんなこと言ってないけど)


最後に、忘れてはいけないのが主題歌の「風になる」ですね。
正直、風になるを聴きたいがために本作を見ているところもあります。。
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