ちょげみ

天気の子のちょげみのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.0
公開当時は完全にエンタメ路線に切り替えてしまった新海誠に一抹の寂しさを覚えて距離を置いていたんだけど、数年ぶりに見直してみると意外や意外、かなりのめり込んでしまった。


映画というのはめっちゃ面白かったけど一回見るだけでもう満足!みたいな作品からあんま乗れなかったけどついつい何度も見てしまう...という作品までピンからキリまで存在すると思う。

自分の中では本作はどちらかというと後者の部類に属している。
もっというと映像美や音楽などの目に見えて魅力的な要素とかを抜きにしてもなぜか何度も見てしまう作品にカテゴライズされている。

ではそれ以外の要素で何がこうも自分を惹きつけるのか?


一言で言うとテーマ性とかメッセージ性、そしてそれが具体的な所作という形で何度も何度も作中で繰り返し登場している点に惹かれているんだと思う。
要は陽菜さんが行う「祈り」に否応なく引き寄せられるわけですね。


「祈り』が内包する意味というのは多岐にわたっていて、人間が太古の昔より行ってきた原始的な行動だと思うんだけど、本作ではとりわけ新海誠というクリエイターが作品を通して伝えたい思いというのがこのアクションにリンクされているように感じる。

映画監督としてのキャリアを積んでから幾十数年、酸いも甘いも噛み分け、世の中のどうしようもなさと言うのを思い知り、この作品もさまざまな縛りの中で作らなくてはならなかった。
それでもせめてもの抵抗として自分の伝えたいメッセージを映画の中に「祈り」という行為を通して溶け込ませている。
その高密度、高濃度の祈りには心底心を突き動かされた。
(キャラののっぺりさとか設定の奇抜さとかが作品の中に大気が薄いところを作り出しているからなおさらこの行為は鑑賞後強烈に印象に残っている。)


もちろん、監督の祈りとは別に、陽菜さん自身の"世界に晴れを取り戻すために祈っている所作"にも健気さを感じた。

この作品はなんというか、いわゆる"セカイ系"と呼ばれるジャンルに属していて、"世界か女の子かどっちかを選べ"的な結末に至ることが多い。
そしてこの作品も例に漏れず最終的に選択の必要性に迫られて、これまた先行作品の例に漏れず女の子を選ぶことになる。

その時は世界も女の子もどちらも救うのが今どきのヒーロー像だろ"と一瞬思ったのだけれど、この作品は女の子を救った後の世界のことも気にかけているんですよね。

今の時代も考慮すると、とても現実に即した判断というか、リアリティ溢れるラストだなぁと思いました。



...文章がとっ散らかってしまったけれども、とにもかくにも、改めて見返してみると新たな発見が多々あった。
再視聴に耐えうる作品というのはこういう映画のことを言うのかなぁ。
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