風来坊

アウト&アウトの風来坊のレビュー・感想・評価

アウト&アウト(2018年製作の映画)
3.0
きうちかずひろさんと云うと私はビーバップハイスクールの漫画家さんという印象が強いですが、小説家に映画監督とその活躍は多岐に渡る。
この作品は自身の小説が原作で、それを自ら監督した意欲作。

小説は木内一祐名義。「水の中の犬」「喧嘩猿」「藁の盾」の3作しか読んでないです。「アウト&アウト」は書き出しが面白く無くて止めた記憶があります(笑)

とにかくこの映画は主演の遠藤憲一さんの演技と存在感に尽きる。独特の滑舌と低音ボイスは、こういうアウトローの役に迫力を与えるこの人の持ち味ですが、所々はやはり台詞が聞き取りづらい場面があります。

主人公はよくタバコを吹かす。遠藤さんがとてもタバコが似合うので渋くてカッコいいが、流石に子供の前では配慮しろと言いたくなる。子供の事を思ってないのかと疑問に感じてしまうところ。

主人公は元ヤクザという設定ですが、ヤクザ時代を恥じてるようには見えないし、堅気に何としてもしがみついていたいとも見えない。
破門喰らって仕方なく堅気をしているように見えてしまう。思考も態度も探偵というよりヤクザそのままなので、あまり主人公に肩入れ出来ない部分もあります。

ジャケット写真にある「七歳の少女相棒は、元ヤクザの男。職業、探偵。」を触れ込みにするならば、もっと少女との交流にドラマ性を持たせるべきでは?随分とさらっとしています。
覆面男役の青年の心情が意味わからん…。道場の男と青年が2人で踊っただけのような感じに見える。

中盤迄に尺を使い過ぎたのか終盤は急ぎ過ぎて、説明不足で少し分かり難いですね。編集でバッサリ切ったかなのような飛び感があります。
俺が面白いと思うにんだから客もおもしれえだろという小説や映画でみせる独りよがりのきうち節は変わってなくて逆に安心しました(笑)
これがないときうちかずひろ作ではないような気がします。

覆面男役の俳優さんもなんか抑揚の付け方が気になり下手に見えます…スッキリとしたイケメンだけど役者さんとしての魅力がイマイチ。
遠藤さんと竹中直人さんだけが抜きに出てしまっている感じで、キャストのバランスが悪いような…。あっ子役の子は微妙な気持ちが良く出ていて上手かったです。

プロレスラーの中西学さんに関しては、演技に慣れてないのは承知な上で監督が好みで起用したゲスト出演的な枠だと思うので仕方ないかな。
それであるならレスラーである事を活かした格闘シーンの1つくらいは欲しいところですが…。

きっかけは嵌められてその復讐のために事件を追いかけて、厄介な依頼も舞い込んで襲撃犯に同情して、危険を覚悟で黒幕へと切り込んで行く感じは好きでした。主人公の格闘シーンやアクションシーンはほぼ無いので地味。あまり窮地に陥っている感じもしないのでハードボイルドとしては微妙。どちらかというとクライムミステリー寄りかな。

ストーリー構成は盛り上がりどころが薄い、終盤の展開は強引でこじつけ感がスゴくて残念。そんなに上手い事行くかなと…警察もそこまでバカじゃないと思うけど。

遠藤憲一さん演じる主人公の矢納のキャラクターで物語として成り立っている感じです。渋さ抜群の遠藤憲一さんを堪能出来る作品でまあまあ楽しめましたが、物足りなさを感じる作品でした。
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