slow

あなたはまだ帰ってこないのslowのネタバレレビュー・内容・結末

あなたはまだ帰ってこない(2017年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

この物語自体は、あまり好みのものではなかった。それは不倫がどうこうではなくて、全体のバランスなのだと思う。もし…帰りを待つマルグリットが夫の帰還という情報(噂)を耳にし、町に夫の姿を探し遂に見つけるも、あれは誤報(デマ)だったと愛人に言われ、ではあれは現実だったの?幻だったの?…という物語であれば、きっと入り込めた。噂となると、後半の娘を待つ母親のエピソードとも絡んでくるし(100分過ぎた辺りの展開が序盤であれば面白かったのに)。前半不要だ…と言っては身も蓋もないか。描写(感情表現)は静かであるのに、やってることは結構大胆で、そのギャップが最後まで埋まらずに終わってしまう。それもまたフランス映画らしさではあるけれど。と言うかマルグリット・デュラスらしさだ(この人自伝的小説が多いね)。彼女が脚本で携わった『かくも長き不在』が素晴らしかったこともあり、期待し過ぎた部分もあったのかもしれない。とにかく物語には入り込めなかった。
では、その他の部分に目を向けてみる。改めてメラニー・ティエリーはレア・セドゥ顔(ミア・ゴスぽさも)。この系統の顔が好きなので、彼女の演技自体は最高に楽しめた。衣装も素敵。そして、個人的にはブノワ・マジメルよりも、枯れたバンジャマン・ビオレとの再会に感激。色気は半減したものの(渋さでカバー)、目は死んでない。彼の魅力は『閉じられた裸身』で爆発しているので興味のある方は。娘を待つ母親にも抜かりないキャスティング。彼女有名な役者?(彼女が一番素晴らしかった気さえするよ)。随所で聞こえてくるマルグリットの独白(フランス語)の響きとさり気ない生活音の聞き心地はフィリップ・ガレル感を強くし、それらを波音に例える表現や、町の映し方、汽笛のような音の効果も良い。色々言いながらも本作をそこそこ評価できてしまうのは、やはり映像の素晴らしさ、監督の力なのだろう。エマニュエル・フィンケル監督はキェシロフスキやゴダール作品の助監督もされていた方ということで、何かその情報だけでも説得力はあるけれど、自身も様々な賞を受賞するなど実績と実力のある監督なのだそう。初期作や『正しい人間』も観てみたくなったよ。
総じて、雰囲気や外見はかなり好みではあったけれど…という作品でした。
slow

slow