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アラジンのTKLのレビュー・感想・評価

アラジン(2019年製作の映画)
3.6
娘と二人留守番の夜、風呂から上がると実写版「アラジン」の本作がテレビ放映いたので、なんとなく観始めた。
ディズニーの名作アニメ映画の実写化は、近年多数製作されているけれど、アニメ映画の世界観が幼少時分より刷り込まれている者としては、どうしても食指が動きづらく、敬遠傾向が強かった。
今回も、別に途中で見るのをやめてもいいやと思いつつ割と適当に観ていたのだけれど、存外に面白くて、結局最後まで観てしまった。(そして翌日にはDisney+で字幕版を再鑑賞)

アニメ版のほぼ忠実な映画化であり、作品としての“成功要因”も、アニメ版とこの実写版で同じ要素が挙げられると思う。
それはすなわち、ランプの魔人“ジーニー”の、キャラクターとしての抜群の存在感だ。
アニメ版では、ディズニーが創造したあの青い魔神の高テンションと濃いキャラクター性こそが、原典である「アラビアンナイト(千夜一夜物語)」の世界観をも超越した「発明」であり、エンターテイメントの根幹となっていた。

そしてそれが、この実写版でも充分に再現できていたと思う。
ジーニー役にウィル・スミスをキャスティングしたことが、本作における最大の功績だろう。
映画世界の最初から最後まで、縦横無尽な存在感を見せるこのスター俳優のバイタリティとエンターテイメント力が最大限に活かされていたと思える。

またヒロイン“ジャスミン”を演じたナオミ・スコットの美貌と歌唱力も素晴らしかった。
王宮に囲われて、行動や発言が制限されていることへの苦悩とコンプレックスを秘めた王女像を見事に体現していたと思う。

魔神ジーニー、王女ジャスミン、二人の「解放」の物語

何でもありの能力を持ち宇宙最強の魔神であるはずのジーニー、そしてきらびやかな王宮で何不自由なく暮らしているように見える王女ジャスミン、この二人の真の自由への解放こそが、本作の主題として描き出されており、そのストーリーテリングに対する両俳優のパフォーマンスが素晴らしかったと思う。

一方で、前述の二人の素晴らしさと比較してしまうと、主人公“アラジン”と悪役“ジャファー”の存在感が弱かったことは否めない。
アラジンを演じたメス・ナスードは、決して悪くはなく冒頭のアクションやダンスシーンなど極めて高い役者としての身体能力を見せてくれていたと思うけれど、主人公としての絶対的な魅力を表現しきれていなかったように感じた。
歌唱面においても、ヒロイン役のナオミ・スコットと比較してしまうと明らかに差があり、同時歌唱のシーンが多いだけに聴き劣りしてしまった。
また悪大臣ジャファーのヴィランとしての存在感も物足りなかった。やはり、アニメ版のザ・ヴィラン的な印象が強いだけに、実写版ジャファーにも、もっと大仰な悪役造形が必要だったと思う。「二番」とうい言葉に過剰なコンプレックスを抱えるキャラクター設定による小物感や、ぱっと見であまり悪党にも見えないビジュアルも難点だった。

どうやら続編の企画もあるようなので、次作では主人公&ヴィランの“逆襲”に期待したい。
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