Masato

七つの会議のMasatoのレビュー・感想・評価

七つの会議(2018年製作の映画)
4.3

半沢直樹も見ていなく、池井戸作品は初鑑賞。

テレビ局が作りそうなザ・テレビ邦画だった。各登場人物の心情をモノローグであっさりと解説、ややこしくなるストーリーを優しく解説してくれて、全てを文字とモノローグで説明してくれる。全貌がわかるからスッキリして気持ちがいいけど、解釈や見方を限定されるという邦画特有の良くも悪くもな説明過多で、かなりダイジェスト味が強かった。ただ、本作品のような、多義的な解釈を持たない映画であれば、結構相性が良く、かなり楽しめた。

ダイジェスト味が強いといったように、流れるようにサクサクと物語が進んで、テンポがものすごく良い。豪華俳優陣の演技力も相まって兎に角映像が映える。歌舞伎や舞台劇を見るように、各々の演技力が世界観に馴染むようにはせず、とにかく突出する。リアリティがないと言えばないと言えるかもしれないが、これくらいに派手にやってくれた方が気持ちが良い。

主人公的な立ち位置である八角の素性がわからなく、その周りにいる人達の視点から徐々に露わになってくる構図は面白く、浜本(朝倉)と原島(及川)ペアのコミカルな探偵コンビ感が面白い。規模が大きくなる前の序盤あたりの切迫する上司の圧が怖すぎて、これから社会に出ていく身として不安と恐怖を植えつけられた。軽くスリラー。

ただし、エンドロールに流れる野村萬斎のシーンは不要。物語を通して、日本の旧来からある体質に対しての批判を間接的にしてきたはずなのに、それを最後口に出して直接ズラズラと言ってしまったら、安直な感じが出てきてしまいトーンダウンしてしまう。最後の最後にきて、これは致命的だと思う。

英題は「Whistleblower」つまり内部告発者。ゴーン問題で不祥事が大きく取り沙汰された昨今。不祥事が明らかになるのはかなりの確率で内部告発。ゴーン問題の時の告発者はどんな思いをしていたのだろうか、ますますこの映画を見て気になる次第だった。
戦後の名残の慣習と根性論で日本経済は成長してきたわけだが、ここに来て身の丈に合わなかった成長の負の側面が露わになってきた。いまでもこの体質は会社に関わらず多く存在する。陳腐ではあるが、そんな現状に一石を投じた作品だった。
いまの日本企業に存在すべきなのは、上に対抗できる人。そして、それが許される体質。
経営学部で社会的責任などを学んでいる身として興味深く見れた。

キャストに関しては大満足。ベテラン俳優陣の顔の圧力。鹿賀丈史と北大路欣也の顔ときたら凄まじい。また、若手(50代)の野村萬斎と香川照之の伝統芸能コンビの演技力は半端ではない。自然体ではなく、とにかくダイナミックな演技。ミッチーの演技も気弱でも強くあろうとして必死に頑張ってる感じは大好きだった。
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