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魂のゆくえの一人旅のレビュー・感想・評価

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
4.0
ポール・シュレイダー監督作。

『タクシードライバー』(1976)、『ローリング・サンダー』(1977)の脚本家として知られる鬼才ポール・シュレイダーの監督・脚本作品で、信仰の揺らぎに直面した牧師の苦悩を見つめた人間ドラマの力作です。

ニューヨーク州の小さな教会で牧師を務めている主人公:トラーは、信徒の妊婦:メアリーから環境活動家の夫のことで相談を受けるが、やがて自分たちの教会が環境汚染の原因の一つである巨大企業から多額の献金を受けていることを知り、教会の姿勢に疑念を抱いたトラーはある決断を下していく…という“信仰の揺らぎ”に直面した牧師の苦悩と葛藤を淡々と見つめた人間ドラマとなっています。

ブレッソンの『田舎司祭の日記』(1950)やベルイマンの『冬の光』(1962)に連なる、聖職者の神への疑念と信仰の揺らぎを題材とした硬派な宗教心理ドラマとなっていて、教会と環境破壊企業の癒着という社会派な切り口から信仰に疑念を抱き始める牧師の機微を見つめますが、葛藤の末に牧師が下す決断は『タクシードライバー』に類する苛烈さで表現されています。

主演のイーサン・ホークが孤独に苦悩する牧師を妙演していますし、アマンダ・サイフリッドが身重のヒロインを気丈に好演しています。
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