Jun潤

ランガスタラムのJun潤のレビュー・感想・評価

ランガスタラム(2018年製作の映画)
3.8
2023.07.15

ポスターを見て気になった作品。
個人的には『RRR』ぶりのボリウッド映画で、同作でも主演の一人だったラーム・チャランにとっては今作が転機になった作品とのこと。
インド映画はおもろいけど尺が長い、その分内容も盛り沢山で期待値は高いんですけど、集中力との闘いですね。

1980年代、インドにあるランガスタラム村。
川から畑に水を引く機械のエンジニアとして働くチッティは、難聴のために他の村人たちとコミュニケーションを取るのも困難だったが、気にせず明るく暮らしていた。
そんなある日、チッティは偶然出会ったラクシュミに一目惚れし、不器用なアプローチを続け、彼女も惹かれていくが、やはりどこかすれ違ってしまう。

その頃ランガスタラム村は、「プレジデント」を自称する村長・ブーパティに牛耳られており、借金の返済が滞ったり完済したはずがいちゃもん付けや利子払いに苦しめられたりで、村人たちの中には農業がままならない者も出てきていた。
そんな状況に対してチッティの兄であるクマールは声を上げ、州会議員のムールティの力も借りて村長の座を勝ち獲ろうとしていた。
しかし、過去にもブーパティの圧政からの解放を目指す者がいたにも関わらず、ブーパティに敵対する候補者たちは不審な死を遂げていることを知ったチッティは、クマールの身を心配するが……。

なるほどなあ〜…、長え……。
ジャンルはアクションで、あらすじは政治的な感じがして、どういうストーリーなんだろうとワクワクしていましたが、序盤のチッティの場面などはどう観てもコメディです。
それはそれでシュールだしラーム・チャランの表情も良いしでとても面白かったのですが、時系列が気になってしまって作品のノリに遅れをとってしまいましたね。
終盤の展開で最初のシーンを起点にすることの意味が分かるのですが、それが全くわからない状態で、ランガスタラムの状況やチッティ視点の間をストーリーが往復していたこともあり、どこでどうストーリーが展開されていくのか、悪い意味で不透明だったことが気になりました。

あと良い意味で気になった点としては、インドのエンタメ事情が関わっているのかもしれませんが、喫煙や飲酒シーンがある度に左下に字幕が出ていたことですね。
何が書かれているのかは分かりませんでしたが、しきりに字幕が出てくるのでどうしても気になりますし、気付くことができる共通項がそれだけありました。
他にもタバコも酒も出てきていないのに字幕が出ている場面について、インドではタブーなのかとか、宗教的なことなのかとかを考えられたという意味では新たな発見が今作にはありましたね。

演技で言うとやはりラーム・チャランですね。
『RRR』での精悍な男性のイメージが強く残っていましたが、序盤のコミカルさや中盤の不安定な場面での表情を観ると、とても同じ役者とは思えない顔つきでした。
しかし終盤で肝の据わったチッティが兄や村の人たちのために立ち上がる場面ではもう、やはりラーム・チャランはこの顔だと印象つけるあまりにも凛々しすぎるカッコいい表情になっていましたね。

ストーリーや作品全体のテーマとしては、コメディや恋愛、家族、支配からの解放などなど盛り沢山の中で特に象徴的だったのは、ランガスタラムを舞台、村人たちを操り人形だとして、村人たちを操っているのは果たして誰のなのか、操る糸を切ってしまうとどうなるのか、ということなのかなと感じました。
そのことに言及されたのが序盤のミュージカルシーンだったのでそこに気付くのに時間がかかりましたが、むしろ政治的、感情的な人の営みのメタファーとしては良いバランスだったと思います。
そういう意味でいくと、チッティだけが糸に吊られていないから、周囲とは違う行動をとるし、認識の違いが生まれるけど、だからこそ何にも囚われず立ち上がり戦うことができるキャラクターになったんだと思います。
Jun潤

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