菩薩

町田くんの世界の菩薩のレビュー・感想・評価

町田くんの世界(2019年製作の映画)
4.2
キャスティングに難ありな部分が多々ある、前田敦子の制服姿なんてかわいいもので、大賀や岩田剛典の同級生、高畑充希の後輩設定なんてかなり厳しい。だが終盤のあの展開を前にしては、もはやそんなものすらかわいいものだと思えてくるし(つかわざとだろ)、オーディションを勝ち抜いたらしい真新しい才能である主演2人の瑞々しさが全てを帳消しにしていく。漫画原作・学園モノとくればこりゃまたしょーもない恋愛物語かと思いきや、この作品のテーマは「恋愛とは狂気の一種である」てのと「世の中はクソだから勘違いしてなきゃやってられん」であり、邦画にありがちの絶叫・全力疾走もふんだんに取り入れられているが、それも全てが狂気の末の行動として説明がつく、おそらく石井裕也は満島ひかりにフラれて以降完全に気が狂っているのだろう。善意の塊でしかない町田くんが悪意の集団である社会の中に解き放れていく、彼の純粋なまでの優しさは時には誰かを傷つけてすらしまうが、しかしその努力と友情は決定的な勝利へと繋がっていく。時には『天空の城ラピュタ』のパズーの様に、はたまたクマのプーさんの様に、町田くんは何処までも愚直に腿を上げ汗を流して走り続けていく。かく言う俺も小学6年間通知表の「思いやり」の欄は◎だったがそれでも付けられた渾名は「女たらし」であったし、中学の時「あなたは優しすぎる」と彼女にフラれた事もあった、なんなんや、あれマジで…。とどうでもいい自分語りはその程度にして、この作品は日本人の心の醜さをしっかりと受け止めているし、そんな悪意と偽善の蔓延る世の中でも、99%のフィクションの中の1%のリアルを見つめようとの気概を感じられる。メンタルが俺寄りの日頃のお世話になっている方々には是非お勧めしたい、最後はちゃんと「青春」に着地するしトキメキも忘れちゃいない。全俺推奨のSFヒーロー青春恋愛物語、南キャン山ちゃん・蒼井優ショックに沸き(は関係無いんだけど)、いらん悪意が蔓延る日本列島には必要な作品だと思うし、町田くんの様な人に、私はなりたいと思った。
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