MasaichiYaguchi

町田くんの世界のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

町田くんの世界(2019年製作の映画)
3.8
このところ凄惨な事件や事故が多くて本作に登場する吉高洋平ではないが、「世界は悪意に満ちている」と気が滅入るが、石井裕也監督が殆ど演技経験のない新人二人を主演に抜擢し、安藤ゆきさんの同名コミックを実写映画化した本作では、「善なること」をテーマに、純粋無垢で困った人を放っておけないお人好しの高校生・町田一を巡る青春を時にコミカルに、時にファンタジックに描いていく。
「町田くんの世界」と似た主人公やテーマを扱うイタリア映画で「幸福なラザロ」があるが、この作品では現代社会でも中世のように搾取する側とされる側があり、その不条理さを無垢な青年ラザロによって浮き彫りにしてみせたが、本作ではそういったダークさを前に出さず、主人公の“ピュアな善”にもたらされる周囲の変化を中心に描いている。
この“ピュアな善”を振り撒く町田くんを細田佳央太さんが初々しく演じていて、観ていて町田くんにエールを送りたくなる。
そして母親のスキャンダルで心を閉ざしたヒロイン・猪原奈々を関水渚さんが揺れ動く感情を豊かに演じていて魅力的だ。
この二人が台風の目のようになって、やさぐれていたり、自信がなかった周囲の人々を巻き込み、その人々に優しさや希望をもたらしていく。
そしてラスト15分の展開は、笑顔と共に我々の心にも一服の清涼剤のように効いてきます。