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町田くんの世界のhiyoriのレビュー・感想・評価

町田くんの世界(2019年製作の映画)
4.1
少女漫画の無垢な感情をそのまま吸い取ったような純粋さを'悪意に満ちた世界'という映画的なキーワードと対比するように存在させ、人を好きになるとは何かという最も単純で本質的な問いを投げかける。町田くんの目から見える世界が他の人とは異なるように、皆違う価値観を持っていて、それが重なり合うことを奇跡とするならば目を背けてはいけないと、ラストで示したのが映画的な答えなのだと思う。
好きという気持ちが分からないけれど恋に落ちるに連れて、人間帯びていく町田くんの真っ直ぐさが、周りの世界がどうであっても思うように生きるのが恋だと言っているようで、この映画は自分にとっての救いでもある。
新人2人と脇を固めるベテラン勢の演技も非常に見応えがあったのだが、少女漫画を俯瞰的に捉えるような石井監督の演出はそれ以上に天才的。他の監督が作ったら全く違う映画になっていただろう。
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