No.877[題名が全てを物語る、野次馬興味による殺人鬼の"商品化"] 30点
ドキュメンタリーが苦手なのはセンチに流すタイプと事実を並べて"とぼける"タイプの二つがあり、単純にどっちも好きになれないからだ。加えて、わざわざ現実逃避に映画を見ているのに、そこで現実を知ろうとは思わない。というわけでほとんどドキュメンタリーは見ないし、見た中でも気に入ったのは「テキサスタワー」だけ。
本作品でブルムフィールドはウォーノスにインタビューを試み、逮捕されてから彼女を養女に迎え入れたおばさんとウォーノスの超胡散臭い弁護士について回る。金を払わないとインタビューは受けないと言うおばさんと常に歌いまくっている弁護士を見た後だと、ラストに登場して"まくし立てる"ウォーノスが礼儀正しくマトモに思えてくるのは恐るべきマジックだろう。
結局は見世物小屋映画の域を出ず、ウォーノスを知っている人に対して野次馬のようなインタビューとも言えない質問を投げることでブルムフィールドは満足感を得ようとしたのだろうか。それとも取り敢えず同時代の記録として撮影したのか。ウォーノスのインタビューである最後の15分以外は明らかに不必要であり、そこで疲れてしまった私はウォーノスが漸く登場しても興味が薄れていた。記録としては存在意義も理解できるが、ドキュメンタリーとしては失敗。ただ、死刑のやり方を順を追って話してくれたのは奇妙な体験だった。
ブルムフィールドは後にウォーノスの映画をもう一つ撮っていて、2011年版では本作品が、2013年版では本作品が抜けそっちが選出されている。編者も入手困難な本作品をどうしても見て欲しい映画にするのは良心が咎めたのだろか。超つまんないからそうしてくれると助かるよ。
インタビュー中に後ろのプールに誰か飛び込んでて笑ってしまった。どこまでも気の抜けたドキュメンタリーだった。