半兵衛

柔肌色くらべの半兵衛のレビュー・感想・評価

柔肌色くらべ(1984年製作の映画)
3.7
小沼勝監督は時折脚本が意図する世界を忠実に再現しようとするも独自の職人技が空回りして変な作品になるときがあるが、これもそんな作品。二組の夫婦によるスワッピングものだけれど、物事を深く考えないキャラクター、登場人物の場当たり的な感情を優先しまくり伏線や物語の構成をあまり考えない脚本、そんな馬鹿馬鹿しいノリを真面目に漫画チックに施した結果四コマのエロ漫画(『みこすり半劇場』など)を読んでいるような作品に。

でも感情のひだとかそんなものに縛られず、自分がしたいことをエロも含めて本能のままに繰り広げる登場人物の考えるより動くを優先する動作に清々しさがあって、段々とそんな馬鹿な作風を楽しめてしまう。特に中盤、金持ちのほうの夫婦の旦那である上田耕一が自分の家で演奏会を呼んでもう一方の主人公夫婦を呼んで四人でディナーを楽しんでいる最中、上田の妻仁科まり子の言動にキレた親王塚貴子が雰囲気を読まず彼女をぼこぼこにして、演奏会の楽器にぶつかり衣服を破りながらキャットファイトを繰り広げる様はジョン・フォードや森崎東みたいな爽快なアクション性が感じられて面白かった。収集がつかなくなり使用人たちから水をぶっかけられるシーンは『砂塵』のキャットファイトやフォードみたいで思わず爆笑。

夫婦の問題より、かつて親友であったが現在は親王塚の旦那で同級生でもある北見敏之をめぐり仲が悪くなった親王塚と仁科二人の女性がスワッピングを通して自分達の本来の友情を再確認する展開が新味。そんな二人が性行為を経て結ばれて自分の上にいた北見を追い落とし、彼を放っておいて花見を楽しむラストは下手な女性ドラマよりも現代的かつ逞しくてちょっと感動してしまった。
半兵衛

半兵衛