れおん

銃のれおんのレビュー・感想・評価

(2018年製作の映画)
4.9
無気力な大学生活を送る、西川。彼には生き甲斐もなく、友達にも <家族> にも自分が持ち続ける "孤独" を打ち明けることができない。そんな彼に、思いも掛けないことが訪れる。土砂降りの雨の中、河川敷で一丁の銃を拾う。彼の心は満たせれ、言葉では表せない、高揚感に包み込まれる。銃を手に入れた彼はもう何もいらない、その銃があれば何も。
全編白黒で描かれる、銃を不意に手に入れた一人の青年の物語。映像の手法は興味深く、村上虹郎に焦点を当てる。岡山天音・広瀬アリス・リリーフランキー、そして最後の最後に出演する村上淳がとても良い味を出している。類を見ない、独特の展開は僕の心を鷲掴みにした。
村上虹郎の演技は圧巻。彼の演じた西川にも心が奪われた。映画作品の中で僕が追い求めた人物。太宰治「人間失格」の大庭葉蔵が持っているものを西川は持っている。誰も信じることができない、本当の自分を隠し通し、自己陶酔する。他人からは変人だと思われる。普通にしているのに、何を考えているのかがわからないと言われる。彼らが持っている"もの"は「深い孤独」だ。彼らは人から嫌われ、自分を嫌い、どうすることもできない心を制御できず、"人間" では無くなってしまう。
あゝ無情。西川は銃を手にしたことで救われたのか。はたまた、彼は"何か"を失ってしまったのか。
れおん

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