このレビューはネタバレを含みます
予告編とすこし印象、というか台詞がちがった?
カルリートスの思想はこうだ。
“『他人のもの』なんてものは存在しない。”
“僕は神様の使徒(スパイ)”
自由に、楽しんで、盗みを繰り返す。
カルリートスは、転売して金儲けするラモンとは違う。
彼は金に興味はないのだと思う。
富を手にすることではなく
スリルを味わって、生きていることを実感する。
それはきっと宝探しのようなものかもしれない。
誰のものでもない宝石を集めて回る。
だけど最後、ラモンと心中を図ったのは、自分と一緒にいると思っていた相棒が、“誰かのもの”になってしまったと感じたからだろう。
永遠に、自分のものにしたいと初めて思ってしまったか。
殺人や泥棒を繰り返す、なんという堕天使なのだと思えば、浮浪者の胸にパールのブローチをつける。
カルリートスは慈悲とか倫理観が欠落している
とても合理的なのだ。
バレたから殺す
相棒を殴ったから殺す
浮浪者にプレゼントをしたのは、きっと同じ感覚だ。
お金がないなら、お金になるものを与えてやる。
優しさなんてものではなく。
彼は自由を愛した。
逃走中の電車内で涙を流したのは、
自分の体が、自分のものではなく
自由を奪われたと感じたからだろう。
彼の感情が一番現れるシーンだ。
カルリートスはきっと美しいものが好きだ。
ベッドに横たわるラモンの下半身に宝石を散りばめる。
絵画を飾る。
パールの耳飾りをつけた自分を若き母に重ねてうっとりと見つめる。
彼には彼で美学があったのだろう。
盗みもその一部だ。
彼にしかないロマンが彼を暴走させたのかもしれない。
美しい毒が。