このレビューはネタバレを含みます
『その男、凶暴につき』から2本続けて。知名度では劣る本作だがこちらの方が圧倒的に好み。乾いているのにリリカルで、媚びないダンディズムに満ちている。
たけしではなく朴訥フェイスの青年が主人公を演じたことも手伝って全体としてはオフビートで淡々とした印象。ガダルカナル・タカやダンカンは決して演技が上手いわけではないけれど、「こういうやつおるよな〜」って感じで味わい深い。襲撃失敗後に主人公とダンカンが二人並んで無言でアイスキャンデーに齧り付くシーン。流れる空気がエモすぎるんよ。飾らない静的な映画ではあるがコントっぽく笑える場面もちらほら。タカが灰皿で無礼な女を殴りつけるシーンなんて最高。あとクソデカ将棋の駒もね!
粗暴なヤクザ役でたけしが登場する沖縄のシーンはすべてが白昼夢のように幻想的で実に美しい。居酒屋での他愛無いやりとり、真っ白な浜辺でのゴムボール野球、突然路上に置き去りにされる正体不明の黒人女性。極め付けはやはり極楽鳥花の冠をかぶったたけしの姿だろう。鮮烈なオレンジ色が今も脳裏にチラついている。オフビートたけし恐るべし!マイフェイバリット殿堂入り。