振った先にあるもの。
久しぶりの北野武監督作です。
監督作特有の、唐突な暴力と笑いは、劇伴のない静寂さも相まって、映画の良い緩急になっていました。(下手な歌を披露する中での暴力シーン、サヤカ(石田ゆり子)が上手くボールを投げてもらえず、気付かれないように反抗しようとするシーン、花束の中に銃を仕込み、敵方を一網打尽にするシーン、タンクローリーでビルに突っ込み、大爆発を起こすシーン等々は、特に印象に残ったシーンでした)
映画という観点から言うと、無駄な説明台詞や描写を排除した、徹底的な省略が多用され、隅々まで映画を観なければという、映画への没入度を最大限高めることに成功していたと思います。
印象的なカットも多く、画の美しさに酔いしれる瞬間が何度もありました。
皆さんもよく取り上げている、2人が横並びでアイスを食べるシーン然り、花畑で花冠を付けている上原(北野武)のシーン然り、いずれのシーンも突飛な場所ではないながらも、撮り方1つで素晴らしいものに仕上げられていました。
ただ個人的に気になった点として、女性や黒人に対する扱いがあまりにも軽視されており、現代の価値観からすると乖離を感じざるを得ませんでした。(当時はこれが許されていたのでしょうか?当時の反応もまた機会を見て調べてみたいと思います。賛否両論であってほしいですね)
オチについても賛否両論ありそうですが、映画としての展開やダイナミズムを感じられた9割方の映像さえあれば評価に値するだろうという考えで落ち着くこととなりました。
総じて、粗は目立ちながらも、画の切り取り方や編集のテンポ感、映画の運動としての緩急含め、センスが滲み出た力作でした!