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葬式の名人のfilesのレビュー・感想・評価

葬式の名人(2019年製作の映画)
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人によって共感の度合いがだいぶ変わる映画です。

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【共感の分かれめ1:舞台】
茨木高校をまるごと舞台装置として使った、とても舞台的な映画でした。
逆説的ですが、このストーリーなら、何もない舞台で演じた方が場面転換がスムーズであり、観客も自分の思い出の中の母校をそれぞれイメージできるので、共感しやすかったかもしれない。

演出もセリフの掛け合い重視の方針だったのかな。だから、我らが高良さんのように、場の雰囲気に瞬時に溶けこんで微細な表情で語るアップ向きの映画俳優が、その他大勢にみえた。
その点、あっちゃんはさすが元センターだった。一言も発してないのになぜか注目してしまう、独特のたたずまい。さすが集団の中で登りつめただけある・・・。

雪子と豊川の2人、または、あきおが中心のシーンはよかった。私は、そんな心理描写メインのシーンをもっと見たかったなぁ。

【共感の分かれめ2:元ネタ】
雪子がなぜあんなに悟りきっているのかは「十六歳の日記」「葬式の名人」、腕が何を暗示しているかは「片腕」、雪子にとっての吉田との出会いの重さや豊川が女房色が強い理由は「少年」を読むか読まないかで、だいぶ理解度が変わってくる。先に読んでおいてよかった。

映画は上澄みをすくって抑えめにされていますが、原作はディープ。「少年」や「片腕」はR-18。茨高生以外の高校生は学校を卒業してから読みましょう。

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全国の観客からの共感と地元愛、どちらをとるか。両方満たすのにはかなり高度な技術が要る。

今回は地元愛でよかった気がする。だって、茨木市のみんなのための映画だから。批評家としても高名な川端康成先生は、若干苦い顔で、でも愛が伝わるから、にこやかに笑ってます、きっと。
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