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悪は存在しないのfilesのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

★しっかりネタバレしてるので、未見の方はここでSTOP★

いろんな映画を観たら、俯瞰視点で美しく評する感性が磨かれるかなと1年間がんばってきましたが、悲しい哉、私は高橋側の人間でした。本当に、悲しい哉、です。
突きつけられた。

先生&巧が、社長&コンサルと同じ関係性に見えてしまった。

巧は水運びの仕事をよそ者に上から目線でふるし、水を運べない人間を手伝いもしない。彼らと金銭的上下関係がまだ発生してないのに。
それから、自分の生業に熱中して子どもを迎えにいくのを忘れる。お迎えは、働く親なら生活習慣に組み込まれていると思うので、個人的にはかなり気になる。巧はお迎え忘れを深刻にとらえておらず、他の大人に頼んだり、一人寄り道の危険性を子どもに言いきかせたりして対策することを放棄している。
花も、子どもの共同体の中にいるなら、周囲の環境(ここでは自然)の怖さは子ども同士で情報交換してすでに学んでいてもよくて、好奇心だけでは一人歩きしないはずなんだよな…?

と、巧は互助の共同体に一見受け入れられているようにみえて、生存競争の上下関係の論理のみで生きている人間に思えた。それは自分の枠を一切出ようとしない都会のコンサルとも重なった。

そして、社長も先生も自分が高みにいることを自覚し、緊急事態でさえ我がテリトリーを出ようとせず、下々の者に行かせる。

対して、高橋。社長達と先生達が同質のドライな人間であることに気づかず、すぐになびいてしまう。黛は見抜いたのに対し。よく知らない人間と理想郷を築く夢を、冷めきっている黛に無神経に語る。でも、黛が水を重そうに持っていたら代わりに持つ。タバコを吸っていいか尋ねる。そして、真っ先に花に近寄ろうとする無意識の偽善で、巧の精神的縄張りを荒らしてしまい、動物的な仕返しをくらう。

あー、よきもわるきもユルい高橋、人間くさい。

画面の美しさだけでなく、人間くさいドラマをしっかり混ぜこんで映画にする濱口監督、やっぱり最高です。
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