くじら

ジェニーの記憶のくじらのネタバレレビュー・内容・結末

ジェニーの記憶(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 日本の性的同意年齢を13歳から引き上げるための運動をきっかけにずっと見ようと思っていたこの映画を視聴。(アメリカの性的同意年齢は2008年に16歳に引き上げられている。)
 あとアマプラの説明の性的いたずらの文言は止めるべき。いたずらではなく虐待。

⚠️成人による未成年への性的虐待(性的虐待シーンの撮影は大人)、嘔吐、トラウマ、スポーツ界の性的搾取など

感想
作品について
 まず子どもは守られるべき。見る前に心構えをして見たつもりでも辛くて気持ち悪くて休み休みしながらでしか見れなかった。苦手な人やトラウマのある人は無理しないで。
 監督をされたご本人を尊敬するし、監督の、ジェニーの伝えたい事が届いていてほしい。あと未成年の性的虐待シーンは大人が演じたとエンディングで書いてあったので少し気が楽になった。

描き方について
 ジェニーが子どもの頃の作文を読んだ母から電話がかかってきて作文を通して過去の自分と、その身に起きた事を紐解いていく物語。13歳の頃のジェニーは背が低く、実際の写真を見ると本当に子どもだった事が分かってから自分の記憶が崩れて、書き換えられたものだと分かる描き方が上手かった。何度も繰り返し出てくる作文の綺麗な物語の始まりが、過去の体験を美化して自分の心を守っている面もあったのかなと思う。
 ジェニーが自分の初体験を思い出した後、講義で自分の生徒に初体験(オーガズムに達した)を聞いた時の対比が、ジェニーのそれは性的虐待だったことを浮き彫りにしていた。ジェニーが今まで性被害に遭った女性たちに聞いてきたインタビューでは、心を裏切って感じてしまう体に罪悪感を抱く人、不感症の人などが居た。
 ビルに加担してジェニーと3Pした先生もまた最初はビルの被害者だったのが辛い。性的虐待などの被害者がセックス依存や性に奔放になったりすると聞いたことがある。被害に遭ったことが原因だとしても先生がした事が許されるわけではないが、彼女も被害にあっていなければこんな事はしなかったかもしれないから。
 途中にあった若い先生にインタビューしているような映像は何だったんだろう。ジャーナリストのジェニーだからこそ直接聞かなくても証拠から察した結果なのかなと思った。

性的虐待について
 性交渉はお互いに対等な立場で同意した場合に行われるべきものだと私は思う。例え愛があると言ったところで子ども相手に対等な立場か?と思う。間違いなくジェニーの受けた行為は性的虐待だった。でもそれに対して子どもの頃のジェニーは頑なに認めず、被害にあい関係を持ったのが他に複数いると大人のジェニーに言われるまで認めなかったのが辛い。あれは愛だったと思いたい気持ちなのかな。
 聞き分けのいい子でいなければならなかった聡い少女の心の隙を利用することが怖ろしいし、作文の内容の異常さに気づきながら何もしなかった学校の先生もどうなんだ。
 でもこれを訴える場合、おそらくジェニーの証言とこの作文だけが証拠になるんだけど、どうなるんだろう。もしジェニーがもう少し歳上だったらこれは性的虐待になってたんだろうか(未成年の場合は年齢差3歳以内と州法で決まってる州もある)日本なら14歳だったらまず無理だと思う。

味方
 ジェニーの母と今付き合っている男性がまずジェニーの味方をしていたのが印象深い。母は過保護なほどジェニーを心配していて、ビルや先生たちにも少し不信感を持ったのに助けられなかったのが辛かったと思う。物語の最初でなぜ30年以上経った今、母親が昔のことを掘り起こしたのかを考えてる。
 付き合っている男性がジェニーへの手紙などを読んですぐに性的虐待と言ったこと、傷ついているジェニーに酷いことを言われても、彼がジェニーを心配していることに救われる。(もし日本だったらセカンドレイプになりそうで)
 
おまけ
 日本だったら彼女のような人は黙殺されるかでっち上げだと謗られるか偉人を貶めようとしていると批判されるか。もし映画あるいは本にしようものなら、それで金を儲けようとしてるってことはそんな性的虐待なんて事実はなかったんだろうとか被害者が笑ったりできるわけないとか想像を絶するバッシングを浴びるんだと思う。
 被害に遭う子どもを助けてそのケアをする環境が必要。また、加害者をきちんと裁ける法整備や加害者の追跡、子どもと関わる仕事への制限などが整ってほしい。そして子どもたちへの性教育やジェンダー教育が行き届いて欲しい。
 そしてバッシングをする前に、他人の痛みをなかったことにする前に、今一度自分で調べて考えてみてほしい。
くじら

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