Tai

ヘイト・ユー・ギブのTaiのレビュー・感想・評価

ヘイト・ユー・ギブ(2018年製作の映画)
4.5
この憎しみに終わりはあるのか?

近年、人種差別を題材に扱った作品がいくつも制作されてます。
黒人と白人による物語では『グリーンブック』『ブラック・クラズマン』『ブラインドスポッティング』などが記憶に新しいですね。
本作もそういった問題を問いかけるものとなっているのですが、女子高生を主人公とし、まだ未成熟な人物から見た現代の差別問題を鮮明に映し出しています。

主人公・スターは黒人たちの住む街で暮らす女子高生。父には幼い頃から黒人としての生き方を教わる反面、母の強い希望によって学校は白人の多い高校に通っています。
地元の黒人コミュニティにいるときのスターと、そうでない学校にいるときのスターを、服装や言葉使いなど、まるで自分が2人いるかのように徹底して使い分けています。
そんな生活を送る彼女の目の前で発せられた1発の銃声が、彼女のこれまでの人生を大きく変える事となります。
その弾丸は何故、放たれなければならなかったの?私達が何をしたというの?
黒人たちによる抗議活動は過熱し、巻き込まれていくスター。
その先で彼女の決意したものとは…?

この作品、勝手にドキュメンタリー系のものと思ってたのですが全然違いました(^^;
原作は同名の小説だそうです。
アメリカに行ったこともなく、そういった問題を体感している知り合いもいないので、どこまでがリアルなものなのかがわかりませんが、上記した同じ様な人種問題を取り上げた作品よりも、より現在の問題として踏み込んだ作品だと感じました。

黒人が使うスラングについて「白人が使うとクール。私が使うとギャング」という言葉が出てくるのですが、これこそがこの作品を飛び越え現実問題としてまとわりつく影ですよね。
「差別は良くないことだよー。そんなことしないよー」と言って、彼らの言葉を使って親しげにしておきながら、いざ〝本物〟の彼らを目の当たりにすると脅威を感じてしまう。
だから、結局は彼らは自分の出生を隠す様に相手に合わせて生きていかなければならない。
これでは根本的な和解、相互理解とはならない訳ですよね。
警察も〝凶悪犯かもしれない〟と思うから何でもない人を痛めつけ、生命を奪うまでしてしまうケースが後を絶たない。
本作では、白人による黒人差別をダイレクトに問題視する上で注視されにくい〝何気ない生活の中に隠された差別〟と〝黒人達自体が抱える闇〟という点にも踏み込んで取り上げているというのが注目すべき内容だと思いました◎
作品1つで解決できる問題では到底ありませんが「これってどうなのよ?」と問題提起して終わるのではなく、現実問題のその先を想像させてくれるラストも非常に良かったです( ´∀`)b

本作の原題「The Hate U Give」で「you」ではなく「U」なっているのが非常に気になったので調べてみると、頭文字をとると「THUG」になるからだそうです。
「悪党」や「チンピラ」を意味する言葉だそうですが、実在したラッパーの2Pacの胸には「THUG LIFE」というタトゥーが。
「生涯チンピラ」的な意味だそうですが「The Hate U(You) Give Little Infants Fucks Everybody」の頭文字から成り立ち「子供たちへの憎しみが皆を蝕む」という意味なのだそうです。
深い!思ったより深い!そして格好良い‼︎(いや、格好良いは不謹慎ですかね。すみません)
作中にはその2パックをリスペクトする人物も登場します。

こうした人種差別による作品を観重ねていくと、日本で行われるヘイトがまだお粗末で可愛く見えますね。
いや、これは決して馬鹿にしているのではなく、アメリカのレベルまで行く前という意味です。
現時点での段階で立ち止まり、ヘイトの先に何があるのかを互いが想像し、解決の糸口を見つけて欲しいですね。
日本は超絶頑張れば、そうした心の先進国になることが出来るのではと思っています( ò_ó)b

長々となりましたが、要は『ONE PIECE』の魚人島編をみんな読むと良いと思います!
あ、本作も是非にお薦めですよ‼︎
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