皿と箸

凪待ちの皿と箸のレビュー・感想・評価

凪待ち(2019年製作の映画)
4.1
テーマとしては福音という事かなと。

悪の様に見えて善、善の様に見えて悪。
その概念の反転こそが希望になると言うことを、震災を背景としたロケーションの中でご存知慎吾ちゃんが演じています。

その風体は彼を困難が襲い堕ちていくほどに寓話性を帯びていき、それに伴って周りから入れ替え不可能な存在として承認されていきます。
また、逆に自分が誰かにとっての救いにもなるという事実も前半の伏線がしっかり回収されており見事です。

この映画に出てくる登場人物の殆どが悪と善が同居する存在として常にキャラクターとしての印象を固着しない様に演出されている事により、人間の主観が規定する善や悪と言うものはあくまで人間の射程であって、人間が悪と判断しても神の視座から見たら福音になるという事を示しており、震災もまた、そのメタファーになっています。

実存的には人間は社会、愛、法による承認を得なければ、一人前にはなれませんが、
都会は環境的にそれが得づらいために犯罪に走る動機になってしまう。
だから権力や暴力装置で統治するしかない。
逆に地方の物理的に逓減していく環境の中では人々の繋がりが生まれ、ある程度の違法行為に対しての寛容さが生じ、包摂されるという対比も若干含まれているのかなとも思いました。

博打にのめり込む様は白石監督もファンを公言して続編も作った「麻雀放浪記」を彷彿とさせますし、(続編は酷かったですが…)前科者が地方で包摂されていくというのは、吉田大八監督の「羊の木」も少し想起しました。
皿と箸

皿と箸