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ドクター・スリープのayanaのネタバレレビュー・内容・結末

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

はじめに能力者のバイオレットが消えてしまうことにどのような意味があるのだろう。シャイニングの「話しかけるのをやめる」ダニーは印象的。指しゃぶりをする等ダニーに幼児退行のような行動が見られることも気になる。シャイニングでも出てきた「風呂にいる女」や、ダニーがアルコールと性行為と暴力に依存してしまうようになることに虚しさを覚えた。
前作を議論した際シャイニングはコミュニケーションなのでは?という話をしたが、黒幕であるローズさんのコミュニケーションスタイルに着目すると相手の望むものを与えて懐柔。とにかく支配的。コミュニケーションというよりも相手を依存させる一方的な対話を行っていると感じた。ブラッドリーが殺されるシーンは本人の演技も相まって本当に苦しそうで可哀想。ホラー大好きでもちょっとキツかった。この描写からローズさんへの共感はゼロに。。。
シャイニングの本質は共感覚・人間の中にある才能である気がする。これを奪い、食い尽くす様子は現代の教育制度に対するアンチテーゼかもしれない。
ダニーが「自分から逃げてきた」と発言するシーンも印象深い。恐怖から逃げる為にダニーはずっとアルコールに依存していたが、助けてくれる隣人がいたことは彼にとって大きな救いとなり得たのではないだろうか。
ローズさんが愛する仲間を失ったことで更に狂い、暴走の一途を辿った。「孤独感」だけでなく、「喪失感」も人間を狂わせる一要因になる。
ジャック・ダニエルをダニーが覚えていてホテルに囚われてしまった父親のジャックと対話するシーンは切ない。前作のシャイニングでも述べたことはあるがジャックは当時のアメリカ社会が生み出した父性に苦しめられていて、それから逃避したかったのだという部分が明確にされた分ある意味社会の犠牲者では?という気持ちにさせられた。"自分らしさ"を生き生き表現することができ、社会の規範に当てはまらない部分も丸ごと愛してあげられれば良いのに……という気持ちに。
シャイニング要素が色濃いのは後半部分から。後半からの追い上げがすごいので見終わったあと胸がじんとくる。個人的に勇気を貰える映画。
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