皆さま、大変お待たせしました。
私のことを覚えておりますでしょうか?
私生活が忙しくなり、合間合間の時間で執筆を進めざるを得なくなったことで、牛歩の速度での公開となってしまいました。本当に申し訳ございません。
愛想を尽かさずフォローをし続け、待っていてくれた皆さまには感謝してもし切れません。
今後とも末永くよろしくお願いします!
さて、ご挨拶はこの程度にして、早速本編へと入っていきます。
あまりに壮大で、奥深い要素が内包されている物語なだけに、まだ考察と根拠が不足している箇所もあるかとは思いますが、ぜひ温かい目で読んで頂けると幸いです。
神話的に語られるディスコミュニケーション、やがて辿り着く生命の神秘と継承の物語。
本作は、キャッチコピーに「一番大切な約束は言葉では交わさない」とある通り、意図的にアニメーションに頼った、言い換えれば依存した作劇になっている箇所が多々あり、解釈としてどれほど正当性を担保できているか分かりません。
ただ人様に伝えるにあたっては言葉にせねば伝わらないので、できる限り自分の脳内に生じた思考を言語化していきたいと思います。
まずは表面的なところからいきますが、誰しもが褒めるであろう、圧倒的な作業量、技巧の限りによって実現された超絶美麗アニメーションは、私が褒めるまでもなく素晴らしいものと言えるでしょう!
緻密に、濃密に描き込まれた漫画家、五十嵐大介の世界が、神秘的な輝きをもって動いている様には、たとえ内容面で理解ができずとも多くの観客が楽しめる部分であったと思います。
こればかりは、当時劇場スルーをかましてしまった自分を呪い殺したくなりました。
要所要所でCGが使われているにも関わらず、全く違和感なく手描き作画に馴染んでいて、ここまでのクオリティに仕上げるにはどれほどの時間と資金を費やしたのだろうと、途方もない情熱と執念に全身の毛を逆立てながら鑑賞致しました。(シナリオ制作含め6年の歳月で完成に漕ぎ着けたそうですね。終わりの見えない長丁場、本当にお疲れ様でした……!)
ただ、本作をレビューするのならば、内容面、それも主に後半(終盤)に重点を置いて語らねばなりません。
本作を観た方は、初見時どういった感想を抱いたでしょうか?
殆どの人は、次のような言葉を発していたかと思います。いや、意味わからんやないか!と。
かく言う私は、そういった感想を耳がタコになるほど聞いておりましたので、数秒おきに一時停止しメモをしながら観ていました。
メモをしたとて、件のシークエンスは視覚情報しかない訳ですから、多少の補助にしかならなかったようにも思います。
とはいえ、止めたからこそ見えてきたものもあったので、完全にまとまり切っていないながらも私の所感をここに残しておきます。
もし未鑑賞の方がおりましたら、鑑賞後に記憶と照らし合わせながら読んで頂けたら嬉しいです。
既に観た方は、こんな見方もあるのかと、或いは同じ見方してる奴いるじゃん!なっかま~と、JKばりのテンションで駆け寄ってきてもらえると書いた甲斐もあったなと思います。
冒頭の、ハンドボールのシークエンスから一貫して描かれるのは、他者とのコミュニケーションの不和、所謂普遍的なディスコミュニケーションの様相です。
そして、以降で重層的に説明されるように、宇宙は暗黒物質に満ちていて、未だ分かっていないことだらけ、それは人間にも言えることで……と、かなり分かりやすくテーマ性を解説してくれます。
最後まで観た私たちにとっては、ここまではいいんだがね……と言いたいところではありますが、ここはバランスを取ってくれたとして飲み込みましょう。
本作はここだけでなく、随所に説明的な箇所が目立っていたのも印象的でした。
終盤が終盤なだけに、相対的に観客に対して優しく作ってくれていると思いました。
確かに、説明不足な部分、物語内で処理できなかった部分があったのは事実です。
しかし、意外と制作側が伝えたかったメッセージに関しては、かなり受け取りやすいかたちに調整されていたように感じました。
ディスコミュニケーションが人間(生物)のもつ逃れられない特性、その負の面であると考えれば、終盤に展開されるエキセントリックでパワフルな「本番」、「誕生祭」は生命の神秘と継承、生と死、ひいては生物賛歌(正の面)が描かれていると考えました。(多くの方が言うように、象徴的な性行為とも考えられるでしょうね!)
良い部分だけでない、悪い部分も全て引っ括めて人間であり、生物であり、そんな彼らの生き様、記憶は、クジラの「ソング」によって確かな継承が行われていく。生まれるということは、同時に死ぬことを意味していて、分からない暗黒物質に満ちた宇宙の中で踠きながらも、どうしようもないディスコミュニケーションを抱えて生き続けて、そして次代へとバトンを渡すのだと、最後の臍の緒を断ち、衝突を起こしていたハンドボール部の子にボールを投げ返すシーンで伝えてきたのだと解釈しました。
総じて、真っ当な青春ジュブナイルの中に詰め込まれた壮大にして、地に足着いたテーマ性に、言葉にはならない感情を湧き起こさせられた作品でした!