ひぐまさん

海獣の子供のひぐまさんのネタバレレビュー・内容・結末

海獣の子供(2018年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ハートフルボーイミーツガール映画かと思ったら、ハードコアスピリチュアルカオス映画。ガチガチに難解なのでエンタメだと思って行ったら顔面ぶん殴られた気分になる。視聴者置いてけぼりで芸術賞狙いに行ってるのか。

とにかく芦田愛菜の演技が上手い。頭もいいし、テレビのコメンテーターもできるし、マジでマルチタレントですね。音楽は流石の久石譲。ストーリーがカオスだったのを久石譲の音楽でなんとかした感がある。

ストーリーは、パンスペルミア説(隕石が海に落下したことで地球に生命体が誕生したという説)をベースに、隕石=男根=精子=人間=父親を象徴するメタファーと、海=子宮=卵子=自然=母親を象徴するメタファーが多数出てきて、両者の交わりによる生命-子供の誕生を象徴するシーンが繰り返し描かれる。宇宙ってのはこの父-母-子という三角形がフラクタルのように何度も繰り返されることで出来てるんだねということを表そうとしてるように読める。

例えば主人公のルカは「母」、空は「父」、海は「子」のメタファーになっている。①空がルカにキスで隕石を与えるシーンは性行為のメタファー。②ルカが海に隕石を与えるシーンは胎内での成長メタファー。③隕石を得た海が海の中で霧散していくシーンは誕生のメタファーになってる。

物語の最後で「大切なことは言葉にできない」というのが無理矢理メッセージの主軸のように提示される。だが、その言葉にできない大切なこととは、父-母-子のフラクタルだという仕掛けになっている。人間に語りえぬ「自然」とは、ということ想像させる。

ざっくりこんな感じだと思うけど、この使い古されたモチーフを今この時代の日本で反復することに何の効果を狙っているのかは疑問。特に、子を持たないという選択肢が普通になった現代日本で、核家族の比喩を使って宇宙を表すことに何のアクチュアリティがあるのだろうか。

勘違いしてる人がいるみたいだけどこの映画も所詮人が作ったもの。この映画が多少複雑だったとしても、海は、自然は、もっと複雑だと思う。