身体が軽く、空を跳んで思い切りボールを打ち込んだ記憶。
はぐれた気持ちになって橋の下に座り込んだ記憶。
土砂降りの中、全力で自転車を漕いだ記憶。
どんどん暮れていく中、波の音でいっぱいになった記憶。
知らない美しいものに触れて、世界の見え方が一変した記憶。
コントロールできないスピードに身を任せた記憶。
自分の中から掘り出した身体の記憶と映画の中の体感が切り分けられない、おそろしく気持ちのよい経験をしました。
それを支えるのはひたすらていねいな、琉花の五感を通してはたらきかけてくる描写の積み重ね。
もしかしたら、自然体験の記憶があればあるだけ気持ちいいのかもしれない。
(もちろん、想像力と共感の能力がそれに上回る人はいると思う。)
「わたしたちのいるこの現実世界はこういう切り方で眺めることもできる」というSFとしてのストーリーもわたしはとても楽しんだけど、この圧倒的な経験のあとはひたすらふにゃふにゃしちょってそこに言葉を費やすのがめんどくさい。
ああ、もう一回経験しに行きたいなあ。