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アルキメデスの大戦のrosechocolatのレビュー・感想・評価

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)
4.1
ストーリー自体はフィクションだが、櫂直という人物の、史実への絡ませ方が上手かった。戦艦大和建造にああいう議論があったのかなかったのかまではわからないが、軍部はどこまで行っても国防という大義名分の元、結局は私利私欲でしか動いていないのはいつの時代も同じ。櫂は美学に基づいて行動しているが、彼も結局のところ真の正義よりも己の我を取ったということだろう。一見美しい話になっているが、我欲にまみれた者たちの攻防ということ。

それにしても恐ろしいのは平山中将の本心である。ネタバレは避けたいので映画観てほしいけど、これって世の権力者たちに共通するのでは。駒としてしか人は動かさない、しかしながら駒になっていることを悟られないように世論を操作する。そして駒は最後には必ず捨てるものだということも。

この作品が、いつもの山崎作品とは違って珍しく薄くなく(→ごめんなさいね)考えさせられる理由は、途中の数値解明劇で盛り上げ、あ〜まーたいつものようにそこらへんで終わらせるのか?と思わせておいてからの討論とひっくり返し、そしてとどめに複数の(正確に言えば3人かな?)パラドックスを展開したから。この映画なら、戦争なんてロクなもんじゃないと言い切れる。自分ではない自分で生きなければならなかった戦争経験者の、全ての人の口が重くなる理由も分かる気がする。
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