夕焼けの美しいボスフォラス海峡を船で渡る少女ハヤット。彼女は小型ボートで怪しい商売を営む父親と呼吸器に繋がれた寝たきりの祖父と共に川辺りに立つ掘っ立て小屋で暮らしている。学校では他の生徒から苛められ、先生からも問題児扱いされており、離婚した母親の家では居場所がなく、常に一人でいる。家の中ではハヤットをパシリのように扱う喘息持ちの変態祖父がゼエゼエ息をする音で満たされ、父親は頻繁に家を開け、家でも独りぼっちだ。大人でも子供でもないハヤットは甘える相手がいなかったせいか、親指をしゃぶってベッドに転がっている事が多く、終始鼻歌を歌って自分を守っている。そんな彼女の哀しい日常に父親がもらってきた人形が加わる。腕を押すと歌ったり笑ったり"I Love You"と言ったりする。誰もいない空間で人形が歌っているのだ。絶妙に彼女の孤独を強調しているじゃないか。 そんな彼女の孤独な日々は父親の逮捕によって真の孤独となってしまう。しかし、これによって自由を得たハヤットは以前から気になっていた船着き場の青年の誘いに応じ、小舟に乗って海に出るのだった。