ぼっちザうぉっちゃー

岬の兄妹のぼっちザうぉっちゃーのネタバレレビュー・内容・結末

岬の兄妹(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

なかなかイカれている。

社会保障制度とか行政の話はあえて絡めずに、とことんまで極限の生活下での兄妹をありありと映し出す。あまりの様子に現実味を覚えづらいが、潮臭さ感じられる岬、屋根の低い錆びついた住居、味気の無い住宅街、などディティールとリアリティに富んだ画面は胸焼けするほどに見覚えのあるものだった。

窮鼠猫を嚙む的文字通りの火事場のクソ力。めちゃくちゃ汚いけど、剥き出しもろ出しの人間力というか、無敵感すら纏った姿に謎の感動を覚えた。

生の喜びと性の悦びは分かち難いものだが、幾分か安易ならざる結びつきを得てしまった感は拭えない。それでもラスト、携帯の着信音に振り向き笑みを浮かべる妹。かくも憂うべきそれは確かに、一人の人間としての「希望」であったのだと解釈したい。

どれだけ容認し難くとも、「仕事」のために御粧しして、共に色んな場所に赴き、ファストフードをたらふく食べ、そして部屋一面の段ボールを剥がし日の当たる暮らしを手に入れた、それは紛れもなく、経験したことの無い「生」を感じられた日々であったのではないか。

生きるとはこういうことだ、とは思わないけれど、こういうのも生きるということだ、と思う。