[ハリウッドの意地とプライドと自己擁護、"魂を売った"感じがしないのは気のせい?] 60点
ハリウッド最初期の内幕ものでチャップリン(「巴里の女性」撮影風景)やシュトロハイム(「グリード」撮影風景)以下有名俳優が本人役で画面の端に出てくるという、サイレント大好き人間にしてみれば夢のような光景なのだが…
主人公リメンバー"メム"ステッドンを乗せた列車はロスに向かう途中の砂漠を走っていた。メムは新婚の夫オーウェン・スカダーと共に中国へ向かう船に乗るためロスに向かっていたが、次第に結婚が性急過ぎたと考え、砂漠で飛び降りてしまう。夜明けと共に気温の上がる砂漠を放浪していると、撮影隊に出会う。主演俳優トム・ホルビーや監督フレッド・クレイモア以下キャストやクルーたちに暖かく迎え入れられる。保守的な両親に女優は恥ずべき仕事であると言い含められていたため、砂漠でのロケ終了後一座にはついて行かないことにするが、既に女優業に魅了されていたメムはハリウッドへ向かった。ハリウッドをウロウロするも仕事は見つからない。そこでメムはクレイモアの事務所に向かいエキストラの仕事を得る。彼から演技のイロハを叩き込まれたメムはスターの階段を駆け上る。しかしそれに連れて嫉妬や崇拝の渦(特に監督クレイモアと俳優ホルビー)に巻き込まれるようになる。
一方、オーウェンは結婚詐欺師であり、新婚旅行で新妻を殺して金を得る殺人鬼だった。逃げ出したメムを追う理由もなく犯罪を繰り返していたが、エジプトで逆に詐欺に会い、メムが出演した映画を見たことでアメリカへ帰る決意をする。
サーカスのシーンの撮影で落雷火災が発生し、どさくさに紛れて復讐しようとしたオーウェンが亡くなる中、脚本を変更して再び撮影を始めるシーンで幕を下ろす。
当時堕落の街の象徴だったハリウッドで懸命に働く裏方や演技指導などを紹介したという点で優れた映画であると思う。ただ"こっちも頑張ってんだぜ、俳優女優の堕落への批判を映画産業そのものへの批判にすり替えないでくれよ"という主張が強すぎる上に、サイレント映画としての特性を活かしたシーンがご都合主義を正当化したシーン以外に無く、ただただ説明臭いのには辟易する。サイレント映画で字幕同士の会話をやっちゃダメでしょ。終盤のサーカステントの炎上シーンはわざとなのか本物なのか分からなくなるほどの迫力だが、"それでもハリウッドは映画を撮る"というメッセージのために使われていて何だかなあと。
メムが"魂を売った"と言う割にその手の描写も不足しているし、というよりまずメムが主人公とも呼べないほど印象が薄い気がする。メロドラマ用に無理矢理付け加えられたみたなオーウェンの挿話が思った以上に幅を利かせており、メムの物語自体は完全に描写不足(なのにハリウッド擁護シーンでは死ぬほど字幕出すというね)。
まぁでもチャップリンとシュトロハイムの舞台裏シーンとハリウッドを眺望する空撮が見られただけでも良いんじゃいないすかね。