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ダンスウィズミーのmのレビュー・感想・評価

ダンスウィズミー(2019年製作の映画)
4.6
ミュージカル映画というジャンルそのものをいじる試みなのだけど、とにかくミュージカル演出がてんで駄目なので序盤30分は観ていて全く高揚しなくて辛い。役者が派手に歌い踊れば映画が躍動する訳ではない、それがミュージカル映画の本当に難しい所な訳で・・・。ミュージカル場面中は全て主人公の脳内世界に切り替わって周りも歌い踊ったりファンタジックになるけど、周りはリアルにした方がこの試みは活きたのでは?
魅力的なオリジナル曲が無いのも致命的。選曲が古すぎるのは誰の趣味なの?

それと最初の踊りの最中にパンチラを見せたのは絶対駄目です。アウトです。

完璧な美貌・長い手足が踊りに映える完璧なスタイル・矢口式コメディエンヌに成れる思い切りの良さ&演技力・優れた運動神経を兼ね備えた三吉彩花が唯一持っていなかったのは人を魅了する歌声で(歌が下手な訳ではないのだけど何かが足りない)、それがまたミュージカル映画としての欠点でもある。


しかしガサツな三吉彩花とガサツなやしろ優が宝田明を追って2人旅を始めてから、俄然映画が活気を帯び始める。失恋方言ストリートシンガーのchayも交えた女子旅は、女性を日本映画的な型にはめない矢口監督の美点が発揮されて魅力的!
肝心のミュージカル映画としては失敗したこの映画に、結果的にガールズ・ムービーとして新しい命を与えている。

三吉&やしろのやさぐれバディ感が良い。三吉彩花は映画の主演女優として充分強いし、整い過ぎてるとも言える美貌を矢口演出によって崩されてファニーな魅力を引き出されていて良い。スクリーンに映えますね。このバディ役にやしろ優をキャスティングしたのはナイス。やしろと宝田明の腐れ縁な関係性も味わい深い。
chayの第一印象を裏切る振り切ったブチキレっぷりは見事で、彼女の見せ場はこの映画一番の笑える瞬間。クライマックスで彼女も会場内にいて観ていたら最高だったのにな。

宝田明からジャファー的胡散臭さだけでなく弱さを引き出した監督の眼は確か。ムロツヨシはちゃんと演技していて、やはりこの人は福田雄一に無駄遣いされているとつくづく残念に思う。

三吉彩花の姉が黒川芽衣とはなんて美人姉妹。何故主人公が子供の時も大人の時もどちらも姉が黒川芽衣の姿のままなのかはよく分からないけど、うちの姉も高校生の時と今も大して見た目が変わっていないのでまあそういう事なのだと思う事にします。姉の娘が矢口組恒例の可愛い気の無いクソガキなのが良い。

一瞬だけ出てくるハマケンの動きがやたらキレッキレなのが可笑しい。


遂にミュージカル面でも活気が宿るクライマックス、やしろがステージ上から三吉に手を差し出す瞬間は個人的には矢口映画史上イチのエモさだった。ミュージカル映画として観なければ、好きな映画です。
ラストの全員登場カーテンコールも優しい。そう、地方のヤカラにも優しいのが良かった。
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