ニューランド

この世界の(さらにいくつもの)片隅にのニューランドのレビュー・感想・評価

4.0
☑️『この世界のさらにいくつかの片隅に』及び⭕️2019年観賞映画個人総括▶️▶️

本年度最後の劇場鑑賞映画。原作をその漫画家の前作が気に入ってたのでBOOKOFFで手にしたのが数年前、その映画版を疑いながら観たのが公開から一年近く経っての2年前か。そして今回、薄まった・分厚くなった・の賛否両論を何故か後者と決めつけ、所用が終わって、空いた三時間を本作に使う。戦争をほぼ真正面から捉えた作品は、わが範疇でもなくあまり観てないが、その中の印象では、スピルバーグの最高作『プライベート・ライアン』を上回り、クリモフの代表作の1本『炎628』に肉薄する程に揺さぶられた。普通が(どこかへ)外れてく世相に対し、変わらぬ当たり前・親しい感情・消えてく秘密の交歓を要求されてるようなキャラが、時々・各々の・細かな個性・感情・空気・変化、巨大な歴史の暴力の覆いと顕在、を通過し、無言の期待通りのピュアさを保ちつつ、初版より遥かに自在なペース・層を持つ広がりの中で、「強うなりたい。優しゅう、しぶとう。(ここ呉の)みんなみたいに。」「(号泣)何で負けたんじゃ!そのために我慢してきた事が、この侭流されてええんか!」「捻れてるのはうちじゃ。」「(どこにでもある居場、自分で選んだ結果なら仕方なくも、選ばれ流さ続けてきて今とここ? いや、)うちがずっとここを(と)選んだんです。」という、個や共同体・国を超えた強靭な境地・生命・生活力・愛の秘めた激しさを持ち携えるに至る、和みと凄み。初版の時はそこまで思わなかったけれど、初めて真に傑作だと思った、本物の厚み・説得力を供えている(それまでこの作家については、相当以前に観たが前作にあたるのか『マイマイ~』、そっちの方を評価していた。)。
俯瞰カットが多く生活空間を素早く効率的に捉え、畳の色・痛みの経年変化の浮び上がりと空襲・砲撃・爆撃・原爆の激烈が対称され、実際と心の中のイメージの描写・息づかせが微笑ましくアニメ内のアニメそのものまで引っ張り出されてる。
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色んな外的・内的契機があって、これ程観たい映画が存分に観れた年は稀なので、年賀状なんかに書いてるリストと、近年ロードショーには殆ど行かなかったので年末には無理だった(が過去の映画祭やNetflix向けの作品の大量公開-既視や駆付け-で可能になった)、テン・ベストも、個人メモとして載っけてみたい(封切作テン・ベストの年内選出は32年ぶりで、最後の年は『エル』『エル・トポ』『光る女』らを最上位に置いた記憶があるが、洋画の2作共既に数年前1度選んだ作品だった~投票してたキネ旬の選考の規約変更~ので戸惑い、翌年もそんなだったので、自然遠のいていった)。 ®️=runner-up

🌕️2019発見・驚嘆映像作品 4×5 +α

①近作・商業映画
アイリッシュマン(米)
ヴィタリナ(葡)
アラビアン・ナイト(葡)
マリッジ・ストーリー(米)
ゴーストタウン・アンソロジー(加)
®️ウィーアーリトルゾンビーズ(日)

②旧作・商業映画
二重結婚者(’53)
メランコリーに妙薬(2008)
真夜中の青春(’70)
間奏曲(’57)
女の賭場(’66)
®️ウィリーが凱旋するとき(’50)

③非興行作
夏が語ること =教育機関内
インディアナ州モンロヴィア=記録保存性
新学期 =中編児童向
MEMENT STELLA =抽象無言語
ことば、ことば、ことば =短編・難アニメ
®️79歳の春 =玖-アジ 報道

④(幾)10年振・且つ改良媒体で
空軍 (デジタル版)
仮面/ペルソナ (3: 4 サイズ上映 )
気狂いピエロ (カメラネガ使用)
あの家は黒い (DCP化)
エストラパード街 (邦訳付)
®️摩天楼 (35ミリ)


観賞本数を誇る年下のプロのライターが、史上の重要作は日本興行界で輸入・配給公開され尽くし・全て観た、日本未公開作や新作に傑作はあり得ない、と断言してて、個人的には、真反対に近い開拓・遭遇手応えだ。未知の領域、理解不足、を益々痛感。来年は、ここ2~30年、名ばかり聞かされてた、C・バーネットのあの黒人映画?の最高作が一般の目に触れるようになるとの事だが、その他にも・・・・

🌕️’19封切映画から邦洋10本ずつ

◼️アイリッシュマン Net
◼️サタンタンゴ 🔺長尺
◼️象は静かに座っている 🔺長尺
◼️営倉 🔺記録
◼️マリッジ・ストーリー Net
◻️ウィーアーリトルゾンビーズ 劇場
◼️幸福路のチー 🔺 アニメ
◻️王国(あるいはその家について) Mus
150分版
◼️ROMA Net
◻️愛がなんだ 劇場
◻️つつんで、ひらいて 記録
◻️海獣の子供   アニメ
◼️失くした体   N.アニ
◼️荒野の誓い 劇場
◼️ラ・ポワント・クールト 🔺 劇場
®️あなたの名前を呼べたなら’20 3/5鑑
◻️この世界の片隅に  アニメ
┗さらにいくつもの
◻️オーファンズ・ブルース ※ 学生
◻️さよなら くちびる 劇場
◻️きみと、波にのれたら アニメ
◻️岬の兄妹 コンペ
®️よこがお ’20 1/21鑑
®️火口のふたり ’20 2/11鑑

本年は観(直せ)れず・印象が淡くなってる作品(🔺印は観たのは1年以上過去、過半は25年前後前に観た作品。仮に同時期に観たにしても、上の2本等、古典的・かつ実験的な、到達度・緊密度・晦渋度、の優劣は存在しない、と確信して)、大巾増尺改編再公開の作品も、数本ずつ入ってる。多くの気掛りの未見作があるし、初長期連続上映=一般公開とはいえ旧作を? しかし、プロ野球の新人王選出みたいで、選者と被選作の只1回のクロス・投票機会だし、敢えて(英では『東京物語』・米では『影の軍隊』を、本国発売の20~40年後に当国公開年間最優秀作に選出していた)。

🌕️デケイドの10本(2010年代発表・同期間鑑賞の作、1作家[結果1国]1本で)

▶️沈黙ーサイレンスー (米)
▶️北~歴史の終わり(比)
▶️郊遊(台)
▶️あなたはまだ何も見ていない(仏)
▶️夜の浜辺にひとり (韓)
▶️ヴィタリナ(葡)
▶️雪の轍(土)
▶️象は静かに座っている(中)
▶️エグジール(柬)
▶️It has been already ended before you can see the end(日)
®️向かいにある夜(智)ー’20 1/14想起

これらは、創られた年か翌年には日本で観れた訳だから、輸送や字幕や経費の問題がかなりクリアされ、タイムラグが少なくなってきたはデジタル時代の利点か。おそらく、どの他権威とも全くカブらぬ個人的チョイス。年食ってアジア人に戻ってるのか? アピチャッポンや賈もレイガダスも加えたい。一方で、イーストウッドもP・T・アンダーソン(新作は素晴しかったが)もポン・ジュノもカラックスも是枝も対岸にある気がする、風格や造型の立派さや時事性は認めても。勿論、C・ノーランやD・フィンチャー、F・アキンも、かたちだけかな。
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