・ジャンル
ドキュメンタリー
・あらすじ
事の始まりは‘80年
ニューヨーク在住のボビーは短大へ入学し登校初日に奇妙な経験をする
知り合いが誰もいないにも関わらず生徒達から妙に馴れ馴れしく歓迎を受け、極め付けに彼は「エディ」と呼ばれる
そして入寮した時、思いもよらない事実が判明
彼に瓜二つで生年月日や養子である事も同じであるエディという休学中の生徒がおり、双子であるという事が分かったのだ
しかし事はそれだけでは終わらない
2人の奇跡的な再会が新聞記事に載るともう1人、デイヴィッドという青年が兄弟であると連絡が入った
こうして対面した3つ子はすぐに意気投合
性格や好みが似ていた事もあり共に楽しく時間を過ごす様に
マスコミもまた異例の事態を大々的に取り上げ彼らは一気に注目の的となった
だがここで疑問が持ち上がる
3人共、本人はおろか両親さえも3つ子である事を知らず養子縁組の仲介業者に面会を行なっても要領を得ない
やがて露わとなったのは一卵性多胎児を実験台としたおぞましい研究の存在だった…
・感想
ユダヤ系の3つ子が生後6ヶ月にして引き離され遺伝と環境どちらが児童の発達に影響を与えるかという実験の検体とされた世にも奇妙なおぞましい研究とそれがもたらした影響、3つ子のその後や研究の目的、背後にいる組織などを追ったドキュメンタリー作品
意図的に3つ子を引き離し研究の実験台とする、というだけでも倫理的に恐ろしかったけど話が進んでいく毎に想像し得る最悪な事実が次々に明かされていってもう何と言って良いのやら…
ジャーナリストの語っていた通り意図的に精神疾患を持つ女性の子供を実験台とし、遺伝の有無を調べていたのなら許される事では到底無いし他にも問題があまりにも多く絶句の一言
もしや…と途中で浮かんだ家庭の経済面だけでなく親の人格も実験材料の1つにされていたら?という事も当たってしまったし…
特に不快だったのが実験の関係者達の振る舞いや言動
出て来るのは2人の助手で責任者ではないとはいえ、関わった者であれば自責の念に駆られるのが普通のはず
しかし実際はにこやかに冗談を交えたり、実験を倫理的に否定しつつも責任逃れを強く感じる言葉も多く語られていた
そして終盤、研究の裏にいる組織にも触れていくんだけどこれがまた…
陰謀論と言われても信じてしまいそうな程に大きな力が働いているとしか思えないし…(元助手の女性の交友関係等)
記録を機密として受け継いだイェール大学と言えば大統領歴任者を多く輩出している事でも有名
加えて陰謀論でよく耳にするSkull and Bonesのある大学でもある
更に胸糞だったのがユダヤ系を実験台としていながら研究責任者のピーター・ヌーバウアー自身がナチスの迫害から逃れてきた家庭の人物だったという事
本来、最もこの手の実験を忌避する様な立場の人間が立ち上げた当事者というのはイスラエルのパレスチナへの仕打ちにも通ずる物があり、逆に言えば人種で人間性は決まらないという事実の証左とも言える
こうやって様々な事を考えさせる物として本作の意義は大きい
一方で終盤、助手の男性のインタヴューを残された2人に見せた時の反応や他のまだ自分が被験者と知らない人々は知った方が幸せなのか否かという疑問
これらを見せられると本作自体が実験その物とは比べ物にならないレベルであるとはいえ残酷にも思える
批判的思考や物事や社会に疑問を持つのは重要という事に異論はない
それでもあまり知り過ぎると何も信じられなくなり自由意志さえも疑う羽目になりかねない
そうなるともたらされるのは不安と恐怖のみ
そんな事も考えさせられた