なちゅん

mid90s ミッドナインティーズのなちゅんのレビュー・感想・評価

3.7
私は好きだな。
90年代のこの空気感というか、映像の粗さとかそういうものが何だか懐かしい。その頃は幼かったから肌身でこのティーンエイジャーのギャングたちの自由さや焦燥感を理解できるわけではないけど。

スティーヴィーはただこの90年代の半ばにティーンエイジャーに差し掛かって、真面目な母親と粗暴な兄の元で、生きている。強くなりたくて、格好良くなりたくて、スケートボードと界隈のギャングたちに近づく。その年齢を全て超えて、彼の母親の方に近い私なんかは、せめてファックシットみたいなただのイキリヤンキーじゃなくて、レイのような冷静さとまともさのある方に憧れてくれたらと思ってしまうけど、そうじゃないんだよね。派手に悪いことをして格好つけてる方が、格好良く見えちゃうんだよね。反発と自由の象徴に見えちゃうんだよね。

この映画は何か明確な善悪があったり、壮大なハッピーエンドがあったりするわけじゃなくて、ただ90年代半ばに13歳だった少年が格好良いと格好悪いを両方経験しながら過ごした日々を淡々と描いている。だから好き。
長い時間の中のわずかな部分を切り取っているような作品だから、その後の日々はどうなったんだろう、スティーヴィーはどんな大人になったんだろう、と思いを巡らせる。そんな余韻も好き。
なちゅん

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