三四郎

争う美人姉妹の三四郎のレビュー・感想・評価

争う美人姉妹(1950年製作の映画)
4.4
喜劇調メロドラマなり!大船調っぽいよな、これキャストを見ても筋を見ても「松竹映画です」と紹介しても誰も疑わぬだろう。
美人姉妹の性格は、派手な洋装和装を着こなすモダンな姉と落ち着いた服を着て、結婚すると良い意味で所帯染みてくる妹、この服装の対比でも象徴されている。
デートシーンは海、波打ちかかる景色。風で何度やっても煙草に火がつかない上原。デコちゃんが察して自分のコートで風除け。煙草に火がつき見つめ合う二人、優しく微笑するデコちゃん。古典的ハリウッドの踏襲。
素敵なシーンに思えたのは、上原が白い花をコップの水に入れる場面。高杉に強引に引き止められ、さらにあの白い花も高杉からの贈り物だった花の一輪であろう。それを「綺麗ね」と微笑むデコちゃんに「こんなもの」というように投げ入れるわけだが、なんとはなく美しく思えた。漱石の『それから』で三千代が鈴蘭と百合を生けた花瓶の水を飲み干す、あのシーンを連想した。
ところで気になったのは上原がデコちゃんに買ってきたエンゲージリング。
デコちゃんが向かって左側、上原が右側にいるので、自然と観客に見せるために上原はデコちゃんの右手薬指に指輪をはめるのだ。ドイツなどでは正しいのだが、公開当時の日本人には違和感があったのではないだろうか、「左手でしょ!」と突っ込みたい人もいたのでは?
深刻になりすぎてしまうこういった筋のメロドラマをうまく軽快に喜劇調にまとめあげている。ラストシーンなんて花束を持った上原が喜び勇んで右手に花束を掲げながらデコちゃんの元へ駆けつけようとする!!道行く人々も何事かと彼を見ている笑
ラストの高杉の顔アップは笑顔だったが、涙を一粒落としながらの晴れやかな笑顔の方が個人的には良かったように思う。
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