このレビューはネタバレを含みます
3時間超えで重厚なドイツらしい映画
「普通でない」遺伝子を残したくないという
ナチスの安楽死政策で殺された若い叔母
その叔母に可愛がられ「真実はいつも美しい」と
教わっていた幼き日の主人公クルト
長じて画家になったクルト
自由がない東ドイツから、
「ベルリンの壁」が出来る直前の
西ドイツに逃れ
クルトは愛妻エミリーと共に苦労を重ねながら
画家として生きる道に活路を見出そうとする
絵画では成功しないだろうと言われた
デュッセルドルフに行き、試行錯誤しつつ
30歳を過ぎて入学した美術学校の教授が自身の
辛い過去の秘密をクルトに明かしたのは
「ただの数字に意味はないが、ロトの当選番号だったら
意味があるし、美しくさえある」と言うクルトの
新しい視点に、希望を見たのだろう
彼は「真実」という過去を背負って芸術に挑む人だった
「作品の良さは、本人にしかわからない」
その言葉が自分自身の原風景に繋がる
きっかけとなったのか
「真実を描きたい」
と目覚めるクルト
登場人物たちの生きた時代背景や
彼らの人間関係を考えると
真実を語るのは勇気がいる事であったようだ
それだけに、自分の進むべき道を見つけた時の
喜びはひとしおだったろう
ずっしり重みのある、見ごたえのある作品だった