キャッチ30

7月22日のキャッチ30のレビュー・感想・評価

7月22日(2018年製作の映画)
3.8
 ポール・グリーングラスは実際の事件を細部に至るまで描く。『ブラディ・サンデー』は血の日曜日事件を、『ユナイテッド93』は9.11同時多発テロを題材にした。

 今作では、77人の死者を出したノルウェー連続テロ事件だ。ただし、映画は単に事件を再現するだけでは終わらない。事件が発生してから何が起こったかを描写する。

 2011年7月22日。ノルウェーの首都オスロの政府庁舎前で爆発が起き、8人が死亡。さらに、労働党青年部のサマーキャンプが行われていたウトヤ島で銃を乱射し、69人の命を奪った。

 容疑者はアンネシュ・ベーリング・ブレイビクという若者だ。両親が離婚し、一人親家庭で育ち、孤独だった彼は救いを求めるように極右思想に染まっていく。弁護士のリッペスタッドは職務上の義務から弁護を引き受けるが、被害者遺族の境遇や家族に危険が及ぶ可能性から葛藤する。首相のストルテンベルグはテロを未然に防げたのではないかと苦悩する。一方、被害者の一人であるビリヤルは事件の後遺症に苦しみ、裁判で証言するよう召喚状を受け取る……。

 グリーングラスは無駄な説明や感情のもたれを省く。恐怖と暴力によってもがき苦しむ人間たちの姿を追う。排外主義への警鐘と民主主義への祈りに聞こえる。