モノクロだということを忘れてしまう。
生活音と自然の音と子供の声、BGMがないのに音が豊かで鮮やかで、色がないだけでこんなに洗練されて世界が見えるのかと舌を巻いた。
テクい撮影をしながらもキュアロン自身のとてもパーソナルで情緒的な面も見えて、監督の思いがひしひしと伝わってくる。
なにか劇的なことがおこるわけじゃなく、単調で、しかも130分もあるのにずっと目が離せない。生活の一部をそっくりそのまま画面に封じ込めたような繊細さと、打って変わってカットが容赦なくぶっつり切り替わるのがかっこよかった。
静謐なのにダイナミックさを感じる瞬間がある。
全体的にゆっくりした長回しの横移動、横移動、横移動からEDのティルト・ショットで抜けるような空に飛んでいく飛行機ってのがOPで水たまりに映った空と対になっていて、もう最初から最後までキュアロンの手のひらの上です。
でもやっぱり、横移動の撮影や引きの画面が多いから、劇場で観られたらどんなによかったろう…という気持ちになっちゃうな。
真っ暗な空間で白と黒のエッジがより一層バキっと立って、もっと映画の世界に没入できたろうにと思うと、家のテレビで観ちゃったのがなんだかもったいない。
子役がみんなめちゃんこ可愛かった。