この映画では理想の政治が描かれている。
そうすると自動的に現政権批判になっちゃう。。。
理想の政治を描くと現政権批判になるという現実がホラー。
ホラー映画ならこの現実に太刀打ちできない。
現実の方がホラーだから。
でもこの映画はコメディ。
コメディには可能性がある。
もっともっとぬるい映画かと思っていましたけど
意外と攻めてるなぁという感想です。
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あ、この映画は日本ではなく、どこかのある国、って設定です。
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しかし、
この映画を現政権批判だと思わない人も、たぶんいる。んでしょうね。
それが、日本の政治エンタメ映画の限界点。
あからさまに現政権批判するエンタメ政治映画は日本では難しい。
この映画が今の政治エンタメ映画のギリギリ。
これは三谷幸喜でしか作れなかった。
結構ギリギリをやってますよ。
ほかの作家ではこんな大ヒット政治コメディ映画は撮れませんから。
これが日本の限界点だと知る意味でも見る価値あります。
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記憶がなくなる=政治的なしがらみがなくなって正しい政治ができるようになる
というのがこの映画のシステム。
でも。ラストにある仕掛けが。。
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史上最悪のクソ総理。
そして、自由な総理夫人。
っていう設定に、
リアルの方がどうしても頭に浮かんでしまって観てるだけで不快。
(でも映画の総理は語学が堪能という設定。
英語フランス語ドイツ語ルワンダ語が話せる頭脳と学力と努力することと社会性と世界に向けた視線を持っている。
しかも、ゴルフの腕はプロ並みという設定。てこととはやはり努力する力を持っている。
努力することで成果が得られることを知っている人は、他人の努力の成果を踏みにじることができない。
映画の中の総理はだいぶマシ。)
こんなにも不快な存在をコメディ映画の主役にするのはかなりハードルが高い。
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やはり三谷幸喜はセリフが上手いですね。
「いつからそんな薄っぺらいヒューマニズムを口にするようになった。
いいかね、アメリカと友好関係を続けることで多くの大企業が潤うんだよ。
万人に愛されようなんて思ってんじゃねえよ。」
byこの映画の1番の悪役(草刈正雄)
短いセリフでも情報量が多いし、
語尾でその人間性や相手との関係性を説明している。
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スターがたくさん出てるんで
いちいち脇役レベルの役でもちゃんと顔を映さなきゃいけないんよね。
ひとりひとりの自己紹介が丁寧過ぎて
テンポが悪くなる。
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長回しも多いなぁ。
しかもあまり意味がない。
映画の場合は長回しに意味が欲しい。
長回しには緊張感が生まれる。
大したことのないシークエンスでも緊張感が生まれちゃう。
しかも長回しの場合、
そのシークエンスのポイントが絞られず散漫になる。
たぶん三谷幸喜はカットを切るのが苦手?
舞台の人だから?
カット割ってポンポン進んで欲しいとこで緩やかに長回しになるからテンポが鈍くなる。
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「記憶をなくした総理大臣だからこそできることがあると思います。
背負ってきたものをなかなかおろせない。
でもあなたにはできる。
世間体やプライドもあなたには関係ない。」
と秘書の小池栄子。
記憶なくしても世間体やプライドは関係あるだろう、
と思うけど、、
これがこの映画のシステム。
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中井貴一と木村佳乃のコメディ演技はさすが一流!
何回も笑った。
特に木村佳乃は普通に喋ってるだけなのに可笑しい。。
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この映画の1番の悪役である草刈正雄のセリフ
「少しでも長くこの世界にいる。
これが私のモチベーションだ。
悪いかね。
今我が国の政治は正しく機能している。
健全じゃないか。
実に良い。
この国の国民は変化を好まない。
大事なのは平穏であることよ。」
悪役がこの台詞をいうってことは、
これは悪いことだということ。
どう考えても現政権批判のセリフだけど、
これを現政権批判だと思わない人も当然いるんよね。。
実際、
この映画をある国の首相が観た後に三谷幸喜と握手してたんですよ。
ヘラヘラ笑いながら。
内容が理解できてたら握手なんてできませんよ。。
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そして
その悪役(草刈正雄)が
総理が記憶喪失だということに気付いてからが第三幕。
さてさてどうなりますやら。
ネタバレはコメント欄に〜♪