このレビューはネタバレを含みます
「すべてを思い出したとき、悪い総理に戻ることもできたんだけど・・・こんなチャンス二度とないからね」
この映画のメッセージは、最後のこの一言に集約されているだろう。
自分がどう生きたいか、これから残りの人生(といっても私の場合まだ折り返してすらいないが)をどう送るか、本当は自分自身で自由に選べるはずなのに、自分が今まで生きてきた人生によって規定され、それに束縛されてしまう。
人間は生きれば生きるほどその人生が狭まっていく。
そんな悲しく矛盾に満ちた(これを矛盾と呼ぶのかは定かではないが)現実を打破するのは、記憶をなくすぐらいしかないのだろうか。
そう考えると、明るいようでとても辛い映画だった。
三谷幸喜の映画は、様々な人間模様を描きながらそこに社会的(といった広い意味での)メッセージを込めているものが多いが、一人の人生に脚光を浴びせて、そこから人生のあり方を問うこの作品は珍しい一作と感じた(自分が見落としていてそういう作品もあるのかもしれないが)