れおん

ラストレターのれおんのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
5.0
なんていい映画なんだろうか。繊細で美しく、透き通っていて、儚い。想いを乗せた、一通一通の手紙。言葉を選び、書き連ね、封筒に入れ、相手に届ける。淡くて切ない、初恋の「想いのかたち」は、何年経ったとしても消えることはない。

姉は亡くなりましたよ。思わず声を失う、鏡史郎。そして、"あなたが結婚してくれてたら…"と一言。
未咲の死の真相を知ったときの鏡史郎の表情と、それからの心の移り変わりの描写がとても切なく、彼がとる行動1つ1つに愛が込められている。

チクタクと鳴り響く時計の時を刻む音。
ラストシーンのラストレター、広瀬すずと福山雅治の掛け合いには、涙が止まらなくなる。

原作・脚本・編集・監督、岩井俊二。ここまで完成されている、純粋な恋模様を描いた作品は、見たことがない。台詞で伝えるところは、台詞で伝える。言葉では伝えきれないところは、演者の表情や行動で伝える。交差する恋心を、映像として、映画として、すべてを表現している傑作。

人が誰かに恋をするとき、そこに理由が必要なのか。鏡史郎はなぜ未咲に恋をしたのか。きっと、そこには理由がない。
れおん

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